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光ファイバー­­­­ケーブル­の種類と選び方ガイド – 仕様・形状・長さのポイント

    光回線の導入や機器の接続変更で、自分で「光ファイバーケーブル」を選ぶ場面が増えています。しかし、シングルモードやマルチモードといった「仕様」、SCやLCなどの「形状」、そして「長さ」など種類が多く、「どれを選べばいいの?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。

    この記事では、そんな光ファイバーケーブルの選び方のポイントを、初心者の方にもわかりやすく解説します。環境に適した光ファイバーケーブル選びの参考にしてください。

    光ファイバーケーブルのモードの違い

    光ファイバーケーブルは、その特性によって大きく分けて「シングルモード」と「マルチモード」の2種類があります。

    各モードは、光信号の伝わり方や適した用途が異なるため、使用目的に応じて正しく選択することが重要です。

    シングルモード

    シングルモード光ファイバーケーブルは、光信号が一本の経路(モード)のみを伝播するように設計されています。このケーブルの最大の特徴は、コアと呼ばれる光が通る中心部分の直径が非常に小さいことです。

    具体的には約9マイクロメートル(μm)と、髪の毛よりも細いサイズです。光の進む道筋が一つに限定されるため、信号の分散が少なく、長距離伝送時の信号の減衰を抑えることができます。

    この特性から、数十キロメートルから数百キロメートルにも及ぶ長距離通信や、高速で大容量のデータ伝送が求められる用途に適しています。

    非常に長い距離で安定した高速通信を実現したい場合や、将来的に通信量が増加する可能性を見越して、高品質な通信環境を構築したい場合に選択するとよいでしょう。

    マルチモード

    マルチモード光ファイバーケーブルは、複数の光の経路(モード)が同時に伝播できるように設計されています。

    シングルモードと比較して、コア径が約50マイクロメートル(μm)または62.5マイクロメートル(μm)と太いことが特徴です。コアが太いため、光が様々な角度で反射しながら進むことが可能となり、複数の光路が存在します。

    この特性により、光源との接続が比較的容易で、ケーブル自体の価格もシングルモードに比べて安価になる傾向があります。しかし、複数の光路を通ることで信号の到達時間にズレが生じやすく(モード分散)、伝送距離が長くなると信号が劣化しやすいという側面も持っています。

    そのため、主に比較的短距離でのデータ通信に用いられます。具体的な例は、オフィスビル内のLAN配線、データセンター内の機器間接続、監視カメラシステムなどです。数百メートル程度の比較的短い距離での通信が主な用途で、コストを抑えつつ光ファイバー通信を導入したい場合に適しています。

    コネクタの研磨面の違い

    光ファイバーケーブルを接続する際には、コネクタと呼ばれる部品が用いられます。

    このコネクタの先端部分(フェルール端面)は、光信号を効率よく伝えるために精密に研磨されています。研磨面の仕上げ方によって、光の反射特性が大きく変わり、通信品質に影響を与えるため、いくつかの種類が存在します。

    代表的な研磨面は次の2つです。

    • UPC
    • APC

    UPC

    UPCとは、光ファイバーのコネクタ端面を球面状に、かつ垂直に研磨する方式の一つです。

    この研磨方法により、ファイバー同士を物理的に密着させることができ、接続点での光の反射を低減する効果があります。PC研磨をさらに改良したもので、より低い反射減衰量(光の反射の少なさを示す値)を実現しています。

    一般的に青色で識別されるコネクタが多く、比較的安価であるため、多くの光通信システムで広く利用されています。

    主な用途としては、LAN配線や一般的なデータ通信、電話回線など、極めて高い反射減衰量が要求されない場面で用いられます。

    ただし、抜き差しを繰り返すと研磨面が劣化しやすく、反射特性が悪化する可能性がある点には注意が必要です。

    APC

    APCとは、光ファイバーのコネクタ端面を斜め(一般的に8度)に研磨する方式です。

    この斜めの研磨面が最大の特徴で、接続点で発生した反射光がファイバーのコアに戻らず、クラッド(コアの周りを覆う層)方向へ逃げるように設計されています。

    これにより、UPC研磨と比較して格段に低い反射減衰量を達成でき、反射による影響を最小限に抑えることができます。一般的に緑色で識別されるコネクタが多く、UPCコネクタよりも高価になる傾向があります。

    主に、反射の影響を非常に嫌う高品質なアナログ映像信号の伝送(例:CATV)や、FTTHのような長距離かつ高感度な光通信システム、波長分割多重(WDM)システムなどで利用されています。

    信号品質を最優先したい場合や、反射によるノイズやエラーの発生を極力避けたいシステム、特にアナログ信号を扱う場合におすすめです。

    光ファイバーケーブルの形状の違い

    光ファイバーケーブルは、その見た目や内部構造によってもいくつかの種類に分けられます。これらの形状の違いは、ケーブルの強度、柔軟性、接続のしやすさ、使用環境と大きく関わってきます。

    以下の3つに分けて解説します。

    • コネクタ形状
    • ケーブルの構造
    • ケーブルの種類

    コネクタ形状

    光ファイバーケーブルの端に取り付けられるコネクタは、接続する機器のポート(差し込み口)に合わせて様々な形状があります。

    代表的なコネクタは、次の4種類です。

    • SCコネクタ
    • LCコネクタ
    • FCコネクタ
    • STコネクタ

    SCコネクタは、四角い形状で抜き差しが容易なプッシュプル方式(押し込むとロックされ、引くと解除される)を採用しており、広く普及しています。LCコネクタは、SCコネクタよりも小型で、高密度な配線が求められる場所でよく利用されます。

    また、FCコネクタは、金属製のネジ構造で固定するため、振動に強く確実な接続が可能です。STコネクタは、丸い形状でバヨネットロック方式(差し込んで回して固定する)を採用しています。

    これらのコネクタを選ぶ際の最も重要なポイントは、接続したい機器がどのコネクタ形状に対応しているかを確認することです。また、抜き差しの頻度や設置スペース、求められる接続の信頼性なども考慮すると良いでしょう。

    ケーブルの構造

    光ファイバーケーブルの内部構造も、使用環境や目的に応じて様々です。

    まず、内部の光ファイバー心線の数によって、1本の心線のみを内蔵する「単心ケーブル」と、複数本の心線をまとめた「多心ケーブル」に分けられます。

    多心ケーブルには、複数の光ファイバーテープを重ねた「テープ心線ケーブル」や、複数の光ファイバーをスロットと呼ばれる溝に収めた「スロット型ケーブル」などがあります。

    また、使用場所によって「屋内用ケーブル」と「屋外用ケーブル」にも区別されます。屋内用ケーブルは、比較的柔軟で取り回しがしやすいように設計されています。一方、屋外用ケーブルは、雨風や紫外線、温度変化などに耐えられるよう、防水性や耐候性、機械的強度を高めた構造になっています。

    ケーブルの構造を選ぶ際のポイントは、まず何本の光ファイバー心線が必要かを確認することです。そして、ケーブルを敷設する場所が屋内なのか屋外なのか、また、どの程度の強度や柔軟性が求められるかを考慮します。

    ケーブルの種類

    光ファイバーケーブルには、その用途や敷設形態に特化した様々な種類が存在します。

    例えば、「ドロップケーブル」は、電柱から住宅などへ光ファイバーを引き込む際に使用される屋外用のケーブルで、自己支持型のものや、メッセンジャーワイヤーと呼ばれる支持線が一体となったものがあります。

    「インドアケーブル」は、建物内での配線に適したケーブルで、難燃性の素材が使われていることが多く、細径で柔軟性に富むものが一般的です。

    「パッチコード(または光コード)」は、光ファイバーケーブルの両端にコネクタが取り付けられた短いケーブルで、機器間や配線盤内での接続に使用されます。

    ケーブルの種類を選ぶ際のポイントは、まずどのような目的で、どこに敷設するのかを明確にすることです。宅内への引き込みであればドロップケーブル、オフィス内の機器接続であればインドアケーブルやパッチコードが適しています。

    また、必要な強度や保護構造、耐燃焼性などの規格も考慮して、最適なケーブルを選定することが重要です。

    光ファイバーケーブルの長さの違い

    光ファイバーケーブルを選ぶ際、その「長さ」は非常に重要な要素となります。ケーブルが短すぎれば接続したい機器まで届かず、逆に長すぎると余った部分の処理に困ったり、場合によっては通信品質に影響が出たりすることもあります。

    ここでは、光ファイバーケーブルの長さの違いについて解説します。

    ケーブルの種類と伝送距離による長さの違い

    光ファイバーケーブルの長さは、シングルモードとマルチモードの違いによって大きく左右されます。シングルモードは光の減衰が少なく、数十km以上の長距離伝送に適しており、主に通信事業者の基幹網などに使われます。

    一方、マルチモードファイバーは比較的安価ですが伝送距離が短く、数mから数百m程度のビル内LANやデータセンター内配線などに用いられます。マルチモードにはさらにOM1~OM5といった規格があり、伝送速度や距離に応じて選択します。

    光ファイバーケーブルの長さの選び方

    光ファイバーケーブルの長さを選ぶ際には、まず実測した必要最低限の長さに加えて、将来的な機器の移動や再配置などを想定した長さを見込むことが重要です。

    一般的には、数メートル程度の余長を見込んでおくことが多いですが、敷設環境や将来の計画によって調整します。

    しかし、余長を過剰に取りすぎると、余ったケーブルの処理が煩雑になったり、ケーブルが束になることで放熱性が悪化したり、場合によっては信号品質に影響を与える可能性もあります。必要な長さを正確に把握し、適切な余長を確保しつつ、無駄に長すぎないケーブルを選ぶことが肝心です。

    まとめ

    光ファイバーケーブルを選ぶ際は、これまで解説してきた各ポイントをしっかり確認しましょう。これらの点を押さえることで、ご自身の環境に最適な一本を選ぶことができます。

    もし選び方に迷ったり、仕様について不明な点が出てきたりした場合は、無理に判断せず、接続する機器のメーカーや、利用中の回線を提供している通信事業者に問い合わせるのが最も確実な方法です。正しいケーブル選びで、快適な光通信環境を実現してください。

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