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同軸ケーブルの種類と選び方のポイントを詳しく解説
同軸ケーブルとは、通信や放送、計測機器など、幅広い分野で使用されるケーブルの一種です。しかし、同軸ケーブルの種類は多いことから、どれを使ったら良いのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
今回は、同軸ケーブルの基本的な知識から品名記号の読み方、種類についてまで詳しく解説します。また、選び方についても紹介していますので、最適な同軸ケーブルを選ぶ際の参考にしてください。
同軸ケーブルの基本知識
同軸ケーブルは、一般的に家電量販店などでも販売されています。しかし、種類が多いため目的に合った同軸ケーブルを選ぶのは難しいでしょう。まず、同軸ケーブルの基本知識について解説します。
同軸ケーブルとは
同軸ケーブルは、電気信号を効率よく伝送するために設計されたケーブルで、特に高周波信号の伝送に優れているのが特徴です。そのため、テレビアンテナやインターネット接続、無線通信、監視カメラなど、さまざまな用途で使用されています。
また、同軸ケーブルのシールド効果が高いため、外部からの干渉を受けにくく、信号の損失が少ない点もメリットの一つです。ケーブルとしては比較的柔らかいので、狭い場所や複雑な配線経路にも対応でき、設置の自由度が高いため重宝されています。
同軸ケーブルの構造
同軸ケーブルは、中心導体、絶縁体、外部導体(シールド)、および外部被覆の4つの主要部分から構成されています。中心導体は、信号を運ぶ役割を果たしており、一般的に銅やアルミニウムが使用されます。絶縁体は、中心導体を外部導体から隔離し、信号の漏れを防ぐのが役目です。外部導体はシールドとも呼ばれ、電磁干渉(EMI)から信号を保護し、信号の安定性を確保します。外部被覆はケーブル全体を保護し、物理的な損傷を防ぎます。
同軸コネクタとは
同軸コネクタとは、同軸ケーブルの端部に取り付けられ、他の同軸ケーブルや電子機器に接続するためのデバイスです。同軸ケーブルは、中心導体と外部導体が同軸上に配置されているため、特定の規格に基づいたコネクタを必要とします。同軸コネクタを使用することで、信号の損失を最小限に抑え、高周波信号の伝送を効率的に行えます。
同軸コネクタには多くの種類があり、用途に応じて使い分けられています。代表的な種類は、F型コネクタ、BNCコネクタ、N型コネクタ、SMAコネクタです。F型コネクタは主にテレビのアンテナケーブルに使用され、BNCコネクタは放送機器や測定機器に広く用いられています。また、N型コネクタは耐久性と高周波特性が優れており、無線通信機器や基地局でよく使用されます。SMAコネクタは、高周波数帯域での使用に適しており、無線LANや携帯電話の基地局などで利用されています。
インピーダンスとは
インピーダンスとは、同軸ケーブルの基本的な特性の一つで、電気信号がケーブルを通る際の抵抗値を示します。一般的に、50Ω(オーム)や75Ωがよく使用されています。50Ωは主に通信やデータ伝送に使われ、75Ωはテレビのアンテナケーブルなどに使用されると覚えておくと良いでしょう。通常、品名記号にはこのインピーダンスが明記されており、ケーブルの用途を選定する際の重要な指標となります。
後述する品名記号を理解するためにも、インピーダンスの知識は必要です。
同軸ケーブルの種類
同軸ケーブルの種類は、利用目的に応じて多岐にわたります。その中でも、JIS規格とMIL規格の同軸ケーブルが多く使用されています。同軸ケーブルの種類を理解するには、品名記号を確認することが大切です。同軸ケーブルの品名記号は、規格に基づいて特定の情報を伝えるために用いられています。
品名記号は、ケーブルの特性や仕様を瞬時に理解する上で重要な情報です。ここでは、JIS規格とMIL規格の品名記号の読み方を含め、同軸ケーブルの種類について解説します。
JIS規格
JIS規格は、日本産業規格のケーブルです。JIS規格に基づいて製造された同軸ケーブルは、信頼性や安全性が高く、さまざまな用途に適しています。
JIS規格において、品名記号は通常アルファベットと数字の組み合わせで構成されており、それぞれが特定の意味を持っています。
数字とアルファベットの意味は以下のとおりです。
1.対応周波数 | BS/CS放送対応の場合「S」がつく 対応していない場合は文字がつかない |
2.ケーブルの太さ(直径) | 1.5:2.9~3.4mm 3:5.3~6.5mm 5:7.3~8.3mm 7:10~10.4mm 太くなるほど数字が大きくなり、損失が減少する |
3.ケーブルのインピーダンス | C:75Ω(テレビ用) D:50Ω(無線用) |
4.絶縁体の種類 | 2:ポリエチレン F:発泡ポリエチレン HF:高発泡ポリエチレン |
5.外部導体・シースの種類 | B:二重編組・アルミ箔テープ付編組線 V:一重編組・ビニール W:二重編組・ビニール T:三重編組・ビニール |
例として「S-5C-2V」を見ていくと、次のように解釈できます。
S:BS/CS放送対応
5:太さ7.7mm
C:75Ω(テレビ用)
2:ポリエチレン
V:一重編組・ビニール
一重編組や二重編組は、外部導体の組編が何重になっているかを示しています。二重編組ならば二重、三重組編であれば三重ということです。また、同軸ケーブルの太さは、太いほど損失が減りますが、一方で細いほうが使いやすくなります。
JIS規格の種類ごとの太さと損失の目安は次のとおりです。
ケーブル種類例 | 太さ(外部被覆の外径)目安 | 減衰量(損失)目安 |
1.5D(50Ω)、1.5C(75Ω) | 2.9~3.4mm前後 | 10MHz @82~106dB /km 前後 |
3D(50Ω)、3C(75Ω) | 5.3~6.5mm 前後 | 10MHz @35~47dB /km 前後 |
5D(50Ω)、5C(75Ω) | 7.3~8.3mm 前後 | 10MHz @25~30dB /km 前後 |
7C(75Ω) | 10~10.4mm 前後 | 10MHz @20~22dB /km 前後 |
8D(50Ω) | 11~12.4mm 前後 | 10MHz @17~20dB /km 前後 |
10D(50Ω) | 13.1~14.7mm 前後 | 10MHz @14dB /km 前後 |
MIL規格
MIL規格(Military Specification and Standards)は、アメリカ国防総省が制定した規格で、同軸ケーブルの性能や品質を保証するための基準として広く採用されています。MIL規格の品名記号は、一見複雑に見えるかもしれませんが、各部分にそれぞれ意味があります。その品名記号を理解することにより、ケーブルの特性や用途を正確に把握できるでしょう。
通常MIL規格の品名記号は、いくつかのセグメントに分かれています。最初のセグメントは「MIL-C-17」といった形式で始まり、これは「MIL規格の同軸ケーブルであること」を示しています。この部分は、MIL規格のカテゴリを示す重要な要素です。
次に来るのが「RG」の文字列です。これは「Radio Guide」の略*で、ケーブルのタイプを表します。例えば、RG-58やRG-59などの番号が続きますが、これはケーブルの特性、特にインピーダンスや直径に関連しています。RG-58は50Ω、RG-59は75Ωのインピーダンスを持ち、用途はJIS規格で解説したものと同じです。
*Radio frequency coaxial cable General purposeの略との説もあり
さらに、その後に続く数字や文字は、より具体的な特性を示しています。例えば「A/U」や「B/U」といった記号は、ケーブルのバージョンや改良点のことです。「A」は最初のバージョン、「B」は改良版となります。また「U」は「Universal」を意味し、一般用途に適していることを示しています。
その他にも、外皮材質やシールドの種類を示す記号が追加されることがあります。例えば「PTFE」はポリテトラフルオロエチレン被覆を意味し、高温環境でも使用可能です。
「RG-58A/U」であれば、次のように解釈できます。
RG:Radio Guide
58:型式番号(JIS規格と異なり、太さではなく制定順)
A:付与記号(アルファベット順に振られる)
U:Universal
MIL規格のケーブルの一例は以下のとおりです。
ケーブル例 | 太さ目安 | 特長 |
RG-174/U | 2.5mm 前後 | 1.5Dケーブルより細く、取り回しが良いケーブル。 |
RG-316/U | 2.4mm 前後 | 絶縁体・外部被覆にテフロン系の材質を使用した高品質ケーブル。 |
RG-58/U | 5.0mm前後 | 3Dより少し細い50Ωケーブル。RG-58A/Uは、中心導体が撚り線になる。 |
RG-62/U | 6.2mm前後 | インピーダンス93Ωのケーブル。RG-62A/Uは、外部被覆が非移行性PVCになる。 その他、材質・構造・寸法は同一なことが多い。 |
RG-8/U | 10.3mm前後 | 8Dより少し細い50Ωケーブル。 |
RG-14/U | 13.8mm前後 | 10D相当の50Ωケーブル。二重編組で10-2Wに近い。 |
高周波測定用ケーブル
高周波測定用ケーブルは、特に高周波数帯域での信号測定において、精度と信頼性を求められるシステムに使用されます。周波数帯は18〜60GHzまでに対応しており、非常に高い周波数を伝送するため、電気的特性や物理的特性が厳密に管理されています。
また、高周波測定用ケーブルは「SMA」や「N」をはじめとする高周波向けの小型コネクタにも取り付け可能です。コネクタにおいても、高周波数帯域での使用に適した設計が施されており、厳密な機械的精度と電気的特性が求められます。
さらに、温度特性も考慮されなければならない要素です。高周波測定は、しばしば厳しい環境条件下で行われるため、ケーブルが高温や低温にかかわらず、安定した性能を維持できることが重要となります。そのため、耐熱性や耐寒性に優れた素材が選ばれることが多いです。
セミフレキシブル
セミフレキシブルケーブルは、一般的なフレキシブルケーブルとリジッドケーブルの良い部分を合わせ、柔軟性と安定性のバランスを取れているのが特徴です。セミフレキシブルケーブルは、内部の導体と外部の導体の間に特定の形状を持つ絶縁体を使用しており、そのおかげで曲げやすさと優れた電気性能の両方を維持できます。
セミフレキシブルケーブルは、高周波信号の伝送に優れており、特に計測機器や高周波試験装置などの用途で広く使用されています。曲げ半径が比較的小さく、狭いスペースでも取り回しがしやすいため、設置や配線作業をしやすい点が特徴です。また、リジッドケーブルに比べて軽量でありながらも、優れたシールド性能を持っています。
また、周波数帯は18〜40GHzまで対応しており、高周波向け小型コネクタの取り付けも可能です。
セミリジッド
セミリジッドケーブルは、柔軟性がありながらも一定の硬さを持っているのが特徴です。周波数帯は18〜50GHzまで対応しており、高周波信号の伝送において優れた性能を発揮します。フレキシブルケーブルよりも高い周波数での動作が可能で、20GHz以上の高周波帯での使用にも向いています。
セミリジッドケーブルは、セミフレキシブルケーブルよりもシールド性能が高く、減衰が少ないケーブルです。シールド性能が優れているため、外部からの電磁干渉を効果的に防ぎます。
また、セミリジッドケーブルは、加工のしやすさも特徴です。セミリジッドケーブルは曲げられるため、設置場所に応じて形状を調整できます。しかし、フレキシブルケーブルほど自由には曲げられないため、取り扱いには注意が必要です。特に、狭いスペースや複雑な配線が必要な場合には、事前に曲げる形状などを確認しておきましょう。
セミリジッドケーブルには、高温環境下や機械的なストレスにも強いというメリットもあります。耐久性が高いため、長期間にわたって安定した性能を発揮できます。
同軸ケーブルの選び方
ここでは、自分で同軸ケーブルを選ぶときに知っておきたいポイントを紹介します。同軸ケーブルは次の順番で選んでいくのがおすすめです。
- インピーダンス
- 周波数帯域
- ケーブルの太さ
- ケーブルの長さ
- ケーブルの硬さ
まず、接続する機器に合わせてコネクタの型を決め、次に同軸ケーブルを選んでいくと良いでしょう。
1. インピーダンス
JIS規格の同軸ケーブルは、インピーダンスによって50Ωと75Ωに分かれます。インピーダンスを選択する際は、送受信の機器やアンテナに合わせて選択します。テレビ用に購入したい場合は「75Ω」を選び、データ通信や無線に使うならば「50Ω」を選びましょう。
誤ってインピーダンスが異なるケーブルを使用すると、信号の反射や損失が発生し、通信品質が著しく低下する可能性があります。そのため、使用する機器やシステムのインピーダンス規格に適合したケーブルを選ぶことが重要です。特に、高周波帯域での使用が想定される場合、インピーダンスの一致は通信性能を左右する重要な要素となります。
2. 周波数帯域
同軸ケーブルは、特定の周波数範囲内で最適に動作するように設計されており、使用する周波数帯域によって適したケーブルの種類が異なります。例えば、低周波数帯域(数MHz以下)での使用には、比較的柔らかくて太いケーブルが適しています。一方、高周波数帯域(数GHz以上)での使用には、信号損失を可能な限り抑えるため、より硬くて細いケーブルが必要です。
さらに、周波数帯域に応じてケーブルのシールド性能を考慮する必要もあります。高周波数帯域で使用するには、外部からの電磁干渉(EMI)や電波干渉(RFI)に対するシールド性能が高いケーブルが求められます。シールド性能が高ければ、信号の純度を維持できるため、通信エラーやデータ損失の予防が可能です。
また、同軸ケーブルを選ぶときは、ケーブルの伝送損失(減衰量)を確認しましょう。伝送損失は、周波数が高くなるほど増加するため、高周波数帯域での使用には伝送損失が低いケーブルを選択します。例えば、5GHz帯のWi-Fi通信や衛星通信など、特定の用途や環境に応じて各周波数帯域に最適なケーブルを選定することが大切です。
3. ケーブルの太さ
同軸ケーブルの太さにも、豊富な種類があります。同軸ケーブルの太さは、信号の伝送性能や取り扱いのしやすさに大きく影響を与えます。太いケーブルは抵抗が低く、長距離の信号伝送に優れていますが、取り扱いが難しく柔軟性に欠けるのが特徴です。一方で、細いケーブルは扱いやすく、狭いスペース向きですが、抵抗が高いため信号の減衰が大きくなる可能性があります。
ケーブルの太さを選ぶ際には、使用する機器や設置環境、必要な性能を考慮することが重要です。例えば、高周波数帯域を扱う場合や長距離伝送が必要な場合は、太いケーブルを選ぶことが推奨されます。また、設置環境が狭く、ケーブルの取り回しが難しい場合には、細いケーブルがおすすめです。
4. ケーブルの長さ
同軸ケーブルの長さは、信号の品質に大きな影響を与える重要なポイントです。長すぎるケーブルは信号を弱めてしまい、特に高周波の信号を扱う場合において、その影響が顕著に表れます。そのため、必要最小限の長さを選ぶと良いでしょう。
ケーブルの長さを決める際には、インピーダンスの整合性を考慮することも必要です。ケーブルと接続する機器のインピーダンスが合っていないと、信号が乱れる原因となります。特に長距離でケーブルを使用する場合は、十分に注意を払うようにしてください。
また、ケーブルの用途に合わせて適切な長さを選ぶことも重要です。家庭で使用する場合は、短くて扱いやすいケーブルが向いていますが、業務用や長距離で使用する場合は、信号の減衰を防ぐために高品質なケーブルを選ぶ必要があります。
5. ケーブルの硬さ
同軸ケーブルは、硬いほど耐久性が高く、外部からの物理的な衝撃や摩耗に対して強い特徴があります。そのため、固定設置される場合や、頻繁に動かさない環境での使用が適しています。例えば、建物の内部に配線する際や、固定されたアンテナに接続する場合には、硬いケーブルが有効です。ただし、硬いケーブルは曲げにくいため、狭い場所や複雑な配線には向いていません。
一方、柔らかい同軸ケーブルは柔軟性が高いため、狭いスペースや複雑な配線経路にも対応可能です。ケーブルを曲げたり、ねじったりする必要がある場合でも、簡単に設置できるでしょう。移動が多い機器や、頻繁に配線を変更する必要がある場合には、柔軟なタイプのケーブルが向いています。また、ラボでの実験装置や移動可能なアンテナなどにも、柔らかいケーブルを使うと便利です。ただし、柔らかいケーブルは、物理的な衝撃や摩耗に対して脆弱なため注意しましょう。
まとめ
同軸ケーブルは、さまざま用途に使用されているため、適切なものを選ぶことが非常に重要です。特に、信号の種類や距離、環境条件などを考慮することで、最適なパフォーマンスを発揮するケーブルが選べます。また、理解を深めることでも、より良い選択が可能となるでしょう。
同軸ケーブルの選び方は、用途や目的によって大きく異なります。基本的な知識を持っていれば、最適なケーブルを選んで効果的に活用ができます。ケーブルの品名記号を正しく読み取り、ケーブルの種類や規格を理解することで、より信頼性の高い通信環境を構築できるでしょう。