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同軸ケーブルなどのアルミ電線の特徴とは?分かりやすく解説

アルミ電線は、同軸ケーブルだけでなく、さまざまな電気配線に使用される重要な素材です。銅線と比べて軽量で経済的なアルミ電線は、産業用から家庭用まで幅広い用途で活用されています。
そこで、この記事では、アルミ電線に興味をお持ちの方へ向けて、種類や特性、メリット、具体的な用途について詳しく解説します。電線選びの参考として、ぜひ最後までお読みください。
同軸ケーブルだけではない!アルミ電線の種類
アルミ電線には、用途や要求される性能に応じてさまざまな種類があります。それぞれの特徴を生かすことで、効率的な電力伝送や信号伝送を実現することができます。ここでは、代表的なアルミ電線の種類とその特徴について説明します。
同軸ケーブル
同軸ケーブルは、内部導体、絶縁体、外部導体、外部被覆の4層構造で構成される電気通信用ケーブルです。テレビ用には3C、4C、5Cの3種類があり、数字が大きくなるほど太くなります。3Cは3m以下の短距離配線、4Cは5~10mの室内配線、5Cは10m以上の屋外配線に適しています。
アルミ製の同軸ケーブルは、銅製と比較して約30%軽量化されています。外部導体にアルミ箔を使用することで、優れた遮蔽性と低損失の信号伝送を可能にしています。
鋼心アルミより線
鋼心アルミより線は、中心に鋼より線を配置し、その周囲を硬アルミ線で覆った構造の電線です。この構造により、軽量性と高い機械的強度を兼ね備えています。重量は銅線の約3分の1でありながら、同等の送電能力を持ちます。
外径が大きいことで電界強度が小さくなり、コロナ放電の発生を抑制できるため、高電圧送電に特に適しています。また、より線構造によって取り扱いや施工が容易で、送電容量と安定性の向上にも寄与します。
アルミ合金線
アルミ合金線は、純アルミニウムにほかの金属元素を添加して作られた高機能な導電材料です。世界最高水準の製品では、既存品の2倍以上の強度を実現し、高い疲労特性と接続性、成形加工性を備えています。
銅製の電線と比較して約3分の1という軽さが特徴で、この軽量性を生かし、自動車用ワイヤーハーネスやIoT機器、ロボット関連の配線など、動きを伴う用途で広く採用されています。
また、直径44μmという極細径まで加工可能な優れた加工性を持ち、表面に安定した酸化被膜を形成するため耐食性にも優れているのも特徴です。また、低温環境下でも脆性破壊を起こしにくく、信頼性の高い材料として知られています。
純アルミ線
純アルミ線は、アルミニウム純度が99.5%以上の高純度材料です。銅線と比較して約3分の1という軽量性を持ち、長距離の送電線や配電用途に適しています。
表面には自然に0.2μm程度の緻密な酸化皮膜が形成され、この保護層によって優れた耐食性を実現します。そのため、海岸付近などの過酷な環境でも30年以上にわたって問題なく使用できます。
加工性と溶接性に優れ、TIG溶接やレーザー溶接による接合が可能です。ただし、一般的なアルミ合金と比べて強度が低いため、構造部材としての使用には適していません。主な用途は、電気機器のフレーム、照明器具、化学工業用タンク、エアコンの熱交換器などです。
アルミ導体プラスチック線
アルミ導体プラスチック線は、アルミニウム導体の周りをプラスチック絶縁体で被覆した電線です。銅線と比較して約3分の1の重量で、配線作業の効率化に貢献します。
絶縁体には主にFEPやETFEなどのフッ素樹脂が使用され、優れた電気特性に加え、高い耐熱性と耐薬品性を備えています。また、プラスチック絶縁体は曲げに対して柔軟に追従するため、複雑な配線ルートでも取り扱いが容易です。
主な用途は、軽量化が求められる自動車用配線材や電子機器、通信機器です。また、高温環境での使用やアンモニア冷媒周辺機器の配線材、モーター用巻線としても活用されています。
アルミ電線の特性

アルミ電線は銅線とは異なる特性を持っています。これらの特性を理解することで、適切にアルミ電線を利用できるようになります。
アルミ電線の大きな特徴は、銅線の約3分の1という軽量性です。また、銅と比べて柔軟性が高く、約2分の1の力で曲げることができます。熱伝導率は鉄の約3倍と高く、熱の放散性に優れています。
表面には自然に酸化被膜が形成され、この被膜が内部を保護する特徴があります。同じ重量で比較した場合、銅線の約2倍の電流を流すことができ、電気伝導性にも優れています。
アルミ電線のメリット
アルミ電線には、製造から施工、運用、そしてリサイクルまで、ライフサイクル全体を通じてさまざまな利点があります。
ここでは、アルミ電線の主なメリットを5つ紹介します。
コスト効率のよさ
アルミ電線は、銅電線と比較して大幅なコスト削減を実現できます。材料価格は銅の約30~50%と安価で、特に大規模な電気工事プロジェクトでコストを抑えられるメリットがあります。また、軽量なため運搬や設置にかかる人件費を抑えることが可能です。
市場価格が比較的安定しているため予算管理がしやすく、盗難リスクも少ないためセキュリティ対策費用の削減にもつながります。
優れたノイズ除去性能
アルミ同軸ケーブルは、外部導体にアルミ箔を使用することで、外部からの静電誘導や電磁波干渉を効果的に防ぎます。0.1~1000MHzという広い周波数帯域で100dB以上のノイズ除去が可能で、わずか10µm程度の薄いアルミ箔でも実用的なシールド効果が得られます。
取り扱いや設置が容易
アルミ電線は、施工現場での取り扱いがしやすいのが特徴です。銅線の約3分の1という軽量性と高い柔軟性により、配線作業の効率が大幅に向上します。特に狭い場所での配線作業や複雑な経路での施工では、この特徴が大きなメリットとなるでしょう。
施工面では、ケーブルの搬入、ドラムの荷降ろし、移動、吊り上げ作業などが、従来の銅線と比べて少ない労力で実施可能です。アルミ導体の構成を最適化することで、従来品の1.5倍の柔軟性を実現し、延線作業や端末処理作業の効率が格段に向上しています。
優れた耐食性
アルミ電線は表面に緻密で安定した酸化被膜を自然に形成し、この被膜が内部のアルミニウムを保護します。約1nmという極めて薄い層ですが、非常に強靭で化学的に安定しているため、30年以上の長期使用でも優れた防食効果を維持します。
さらに、表面の酸化被膜が損傷を受けても、酸素が存在する環境であれば即座に再生される自己修復能力を持っています。また、特殊合金を使用することで、標準的な電線と比べて1.6~2倍の耐食性能を実現できます。
高いリサイクル性
アルミニウムは融点が低く、新品製造時と比べてわずか3%のエネルギーで再生が可能なため、「リサイクルの王様」と呼ばれています。
アルミニウムの品質がリサイクル過程でほとんど劣化しないのも特徴です。これにより、電線の導体として使用されているアルミはほぼ100%がリサイクルされ、効率的な資源循環システムが確立されています。
アルミ電線の用途

アルミ電線の特性を生かした応用は、産業界のさまざまな分野に広がっています。ここでは、代表的な用途と具体的な活用事例を紹介します。
照明回路や配電
アルミ電線は、商業ビルや集合住宅の照明回路および配電システムで広く活用されています。トンネル照明用の分岐付き幹線ケーブルでは、指定間隔であらかじめ分岐線を接続してモールド絶縁することで、高い防水性と作業効率を両立しています。
また、集合住宅やオフィスビルの低圧幹線では、工場であらかじめ所定の位置に分岐線を接続した「分岐付きケーブル」が一般的です。
配電用途では、32mm²から120mm²までのさまざまなサイズのアルミ電線が用意されており、用途や必要な電流容量に応じて選択できます。特にインテリジェントビルの配線システムでは、低インピーダンス特性を生かした多心形ケーブルとして使用され、高度な電力制御を可能にしています。
機械や設備の電力供給
工作機械や産業設備への電力供給でも、アルミ電線は優れた特性を発揮します。軽量なため、設置作業の効率化と保守管理がしやすくなります。
また、変圧器などの大容量機器では、巻線のアルミ化により設備全体の軽量化が可能です。これにより、設置時の床への負荷を軽減でき、建物の構造設計の自由度が高まります。
太陽光発電
メガソーラー発電所では、広大な敷地に長距離の配線が必要となるため、アルミ電線の特性が大きなメリットとなります。アルミ導線の軽量性により作業効率が大幅に向上し、作業人員の削減やコスト削減が期待できるのです。
近年では、アルミ導線の外装を青色にするなど、銅線との識別を容易にする工夫も施されており、施工ミスの防止や盗難抑制にも効果を発揮しています。
まとめ
アルミ電線は、優れた特性と多くのメリットを持つ銅線の代替材料として、ますます注目を集めています。用途に応じて適切な種類を選択し、正しい施工方法を用いることで、経済的で効率的な配線システムを実現することができます。今後も技術革新により、さらなる性能向上と用途拡大が期待されるでしょう。
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マイクロウェーブ用同軸ケーブルアセンブリ 標準仕様
DC~145GHzまでのマイクロウェーブ帯域で使用可能な同軸ケーブルアセンブリです。※ TCF107、TCF119アセンブリは高柔軟アーマー補強タイプが標準仕様です。
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