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同軸ケーブルとLANケーブルの違いと適切な選び方のコツを紹介

同軸ケーブルとLANケーブルは、構造や信号形式が異なり、それぞれに最適な用途があります。適切なケーブルを選択することで、より効率的な通信環境を構築できます。
そこで、この記事では、ケーブル選びに迷っている方へ向けて、両者の違いや具体的な使い分け方について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
同軸ケーブルとLANケーブルの違い
同軸ケーブルとLANケーブルは、ネットワーク構築において重要な役割を果たします。それぞれ特徴的な構造と性能を持ち、用途に応じて使い分けることが重要です。ここでは、両者の違いについて詳しく解説します。
同軸ケーブル | LANケーブル | |
構造 | 中心の導体を絶縁体とシールドで覆う円筒状構造 | 8本の銅線をより合わせた構造 |
信号形式 | アンバランス方式(50Ω/75Ω) | ツイストペア方式 |
主な用途 | テレビ・映像信号の伝送 | コンピュータネットワーク接続 |
伝送距離 | 最大500m(標準) | 最大100m |
通信速度 | 最大1Gbps(下り)、100Mbps(上り) | 最大40Gbps(上り/下り同速) |
設置特徴 | 専門的な技術が必要 | 比較的簡単な設置が可能 |
コスト | 工事費:1mあたり約1,100円~ | 工事費:1カ所約7,000円~ |
シールド性能 | 標準で高性能シールド | UTPはなし、STPはあり |
構造の違い
それぞれのケーブルは独自の構造を持ち、その構造が性能と用途を決定付けています。
同軸ケーブルは中心から4層構造になっており、内側から順に、電気信号を伝送する銅線(内部導体)、絶縁体、シールド用の外部導体、そして保護用のビニル被覆で構成されています。この構造により、電磁波の漏えいや外部からのノイズを効果的に防いでいます。
一方、LANケーブルは8本の銅線をより合わせた構造で、単線とヨリ線の2種類があります。単線は1本の太い銅線で通信が安定する特徴があり、ヨリ線は7本の細い銅線を束ねて柔軟性を持たせています。シールドの有無によってUTP(シールドなし)とSTP(シールドあり)に分かれ、用途に応じて選択します。
コネクタ部分も異なり、同軸ケーブルはF型やBNC型の接栓、LANケーブルはRJ-45コネクタを使用します。いずれも高速通信では精密な加工が必要です。
信号形式の違い
同軸ケーブルとLANケーブルは、それぞれ独自の信号伝送方式を採用しており、これにより異なる特性を持っています。
同軸ケーブルは、アンバランス方式と呼ばれる信号伝送方式を採用しています。中心導体に電気信号を流し、外部導体をグランドとして使用することで、高周波信号を効率的に伝送できます。この構造により、外部からの電磁波の影響を受けにくく、信号の損失も最小限に抑えられます。
特に重要なのが、同軸ケーブルのインピーダンス特性です。用途によって50Ωと75Ωの2種類があり、50Ωは無線機器の通信用、75Ωはテレビ放送用として使い分けられています。インピーダンスを合わせることで、信号の反射を防ぎ、より効率的な伝送が可能になります。
一方、LANケーブルは8本の銅線をツイストペア(ヨリ対線)構造にして、LVDS方式で信号を伝送します。この方式では、2本の線で相補的な信号を送ることで、外部ノイズの影響を相殺し、安定した通信を実現しています。
用途の違い
同軸ケーブルとLANケーブルは、それぞれの特性を生かした異なる用途で使用されています。
同軸ケーブルは、主にテレビのアンテナ接続や映像・音声信号の伝送に使用されます。高周波信号を効率よく伝送できる特性を持ち、外部からの電磁波の影響を受けにくい構造になっています。特に重要なのが、用途によってインピーダンスが異なることです。50Ωタイプは無線機器の通信用として、75Ωタイプはテレビ放送用として使い分けられています。
一方、LANケーブルは主にコンピュータネットワークの構築に使用されます。パソコンやゲーム機などのデジタル機器をルーターやハブに接続し、インターネット通信を可能にします。特に安定した通信が求められるオンラインゲームや、大量のデータ転送が必要なオフィス環境で重宝されています。
伝送距離の違い
ケーブルの選択において、伝送距離は重要な判断基準となります。
LANケーブルは理論値で最大100mまでの伝送が可能ですが、実際の運用では夏季の高温時における導通抵抗の増大を考慮して、80mまでが安全な使用範囲とされています。これを超える距離では、信号の劣化や通信速度の低下が起こりやすくなります。
一方、同軸ケーブルは用途や種類によって伝送可能な距離が異なります。一般的なRG59Uケーブルでは300m程度、RG6Uケーブルでは500m程度までの伝送が可能です。さらに、特殊な伝送器を使用すると、最大2,000mまでの長距離伝送も実現できます。
通信速度の違い
通信速度は、用途に応じたケーブルを選択する際の重要な要素となります。
同軸ケーブルの通信速度は、使用する方式によって大きく異なります。一般的なHFC方式では最大200Mbps程度ですが、最新のFTTH方式を採用した場合は最大1Gbpsまでの高速通信が可能です。ただし、上り下りの通信速度に大きな差があり、下り速度が最大1Gbpsであっても、上り速度は100Mbps程度に制限されることが一般的です。
一方、LANケーブルは規格(カテゴリ)によって通信速度が明確に定められています。もっとも一般的なCat5eで1Gbps、Cat6で1Gbps(より高い周波数帯域)、Cat6Aで10Gbps、Cat7で10Gbps(より高い周波数帯域と優れたノイズ対策)、そして最新のCat8では40Gbpsという高速通信を実現しています。Cat7は特に産業環境での使用に適しており、高い遮蔽性能と信頼性を備えています。また、すべてのカテゴリで上り下りの速度が対称であることが特徴です。
設置方法の違い
設置方法の違いは、工事の難易度や費用に影響します。
同軸ケーブルの設置には、専門的な技術と工具が必要です。特にF型接栓の取り付けは慎重な作業が求められ、ケーブルの外皮をむき、絶縁体とアルミ箔を適切な長さで切断し、接栓を正確に取り付ける必要があります。
一方、LANケーブルの設置は比較的簡単です。壁内配線の場合は通線用ワイヤーを使って配管内にケーブルを通し、両端にLANジャックを取り付けます。露出配線の場合は、モールやケーブルフックを使用して壁や床に固定するだけで設置できます。
同軸ケーブルとLANケーブルの使い分け方

それぞれのケーブルの特性を理解し、用途に応じて適切に使い分けることで、より効率的なネットワーク環境を構築できます。
それぞれの使い分け方を紹介します。
映像・放送システムに使う場合
映像・放送システムでは、信号の安定性と品質が重要な要素となります。
同軸ケーブルは、高周波信号を効率よく伝送できる特性を持ち、外部からの電磁波の影響を受けにくい構造が特徴です。特に放送システムでは75Ωの同軸ケーブルが使用され、4K/8K衛星放送のような高周波数帯域の信号も安定して伝送できます。
一方、放送システムのIP化に伴い、LANケーブルの活用も増えています。従来のSDIによる映像伝送では同軸ケーブルが主流でしたが、4K/8Kといった高解像度映像の登場により、複数の同軸ケーブルを束ねる必要が出てきました。そのため、1本のLANケーブルで映像・音声・カメラコントロールを統合的に扱えるIP方式への移行が進んでいます。
データ通信に使う場合
データ通信では、安定性と速度が重要な要素となります。
LANケーブルは、データ通信に最適な特性を持っています。最新のCat8規格では最大40Gbpsという高速通信が可能で、上り下りの速度が対称なため、大容量データの送受信がスムーズです。また、電磁波の影響を受けにくい構造により、遮蔽物があっても安定した通信速度を維持できます。
一方、同軸ケーブルはデータ通信において制約があります。通信速度は下り最大1Gbpsに対して上りは100Mbps程度と非対称で、大容量データの双方向通信には適していません。
同軸ケーブルとLANケーブルを選ぶときのポイント

用途や環境に応じた適切なケーブルの選択は、安定した通信環境の構築に不可欠です。
同軸ケーブルとLANケーブルを選ぶときのポイントを3つ紹介します。
性能で選ぶ
性能面では、用途に応じて適切な規格のケーブルを選択することが重要です。
LANケーブルは、カテゴリによって通信性能が明確に定められています。一般的なCat5eから最新のCat8まで、用途に応じた選択が可能です。特に双方向の高速通信が必要な場合は、上り下りの速度が対称なLANケーブルが適しています。
同軸ケーブルは、インピーダンスの違いによって性能特性が変わります。50Ωタイプは無線機器の通信用、75Ωタイプはテレビ放送用と、用途に応じた使い分けが必要です。
設置条件で選ぶ
設置環境はケーブルの性能や耐久性に直接影響を与えるため、環境に適したケーブルの選択が重要です。
設置場所の条件によって、ケーブルの種類や仕様を慎重に選ぶ必要があります。LANケーブルは配線距離によって選択基準が変わり、10m以上の場合は信号の安定性に優れた単線タイプ、5m以下の場合は柔軟性のあるヨリ線タイプを使用します。また、狭いスペースや窓枠の隙間を通す場合は、フラットタイプやスリムタイプのLANケーブルが便利です。
同軸ケーブルは、外部導体によるシールド効果が高く、電子機器の多い環境での配線に適しています。特に、高周波を使用する機器の近くや、電磁波の干渉が懸念される場所では、同軸ケーブルの使用が推奨されます。また、屋外や高温多湿な環境では、耐候性や耐熱性を考慮した特殊な同軸ケーブルを選択する必要があります。
導入コストで選ぶ
同軸ケーブルの配線工事は、1mあたり1,100円程度と比較的安価です。基本的な配線工事では、3mまでは基本料金に含まれることが多く、追加の配線が必要な場合でも費用を抑えることができます。また、材料費も光ファイバーケーブルと比べて安価で、コストパフォーマンスに優れています。
一方、LANケーブルの配線工事は、1カ所あたり7,000~15,000円程度の費用がかかります。さらに、ネットワークを構築する際には周辺機器の費用も考慮する必要があります。具体的には、ルーターが7,000~10,000円、HUBが3,000~5,000円、ネットワーク設定費用が7,000~8,000円程度と、機器だけでも2~3万円程度の費用が発生します。
ただし、将来の拡張性や通信速度なども含めて総合的に判断することが重要です。安価な導入コストに魅力を感じても、後々の拡張や更新が困難になる可能性があります。特にオフィスなど、将来的な機器の増設や配置変更が予想される環境では、初期費用だけでなく、長期的な運用コストも考慮に入れる必要があります。
まとめ
同軸ケーブルとLANケーブルは、それぞれに異なる特徴と長所を持っています。同軸ケーブルは電磁波の影響を受けにくく、長距離伝送に適しており、主にテレビ放送や映像信号の伝送に使用されます。一方、LANケーブルは高速な双方向通信が可能で、コンピュータネットワークの構築に最適です。
用途や設置環境、コストなどを総合的に検討し、それぞれの特徴を理解した上で、適切なケーブルを選択することが重要です。これにより、より効率的で安定した通信環境を実現することができるでしょう。
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