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高周波ケーブルとは?種類と性能評価指標を分かりやすく解説

5G通信機器の開発プロジェクトにおいて、高周波ケーブルの選定は製品性能を大きく左右する重要な課題となっています。特にミリ波帯での使用となると、ケーブルの特性や性能指標を正確に理解し、用途に適した製品を選定することが不可欠です。
本記事では、高周波ケーブルの基本的な概念から規格、種類、性能指標を分かりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。
高周波ケーブルとは
高周波ケーブルは、高周波信号を正確に伝送するために欠かせない配線材です。
テレビやラジオのアンテナ、通信機器など多岐にわたる用途で用いられ、その基本構造や選定基準を押さえることが重要です。
ここでは高周波ケーブルの特徴と高周波ケーブルの構造を取り上げます。
高周波ケーブルの特徴
高周波ケーブルとは、数MHzから数GHz帯までの信号伝送を安定して行うために設計された同軸構造の配線技術です。中心導体と外部導体を絶縁体で隔て、外来ノイズの侵入を極力抑える構造を備えている点が大きな特徴といえます。
テレビ放送や無線通信分野、医療機器の内部配線など幅広い現場で利用され、高品質なデータ伝送を支えます。
導体の材質や絶縁体の種類、外部導体のシールド方式などは周波数帯や設置環境によって最適な組み合わせが選ばれます。これによって減衰を低減し、接続する機器の性能を最大限に引き出せるよう設計されているのが強みです。
高周波ケーブルの構造
高周波ケーブルは、中心導体・絶縁体・外部導体・シースの4層で構成されるのが基本です。
中心導体は信号を通す重要部分であり、銅被覆鋼線や銀メッキ軟銅線が利用される場合もあります。絶縁体は誘電損失を左右する要素です。ポリエチレンやPTFEなどが多用されます。外部導体は金属箔や編組線で構成され、外部ノイズを遮断し信号の放射も抑える働きを担います。
最外層のシースは保護被膜として機械的耐久力を付与し、温度や湿度変化からケーブル全体を守るのが役目です。
高周波ケーブルの規格
高周波ケーブルには、JIS規格やMIL規格といった、共通の規格が存在します。これらの規格は、ケーブルの性能や品質を保証するための基準となるものです。
規格によって、ケーブルの太さ、特性インピーダンス、使用できる周波数帯域などが決められています。
高周波ケーブルの主な規格には、以下のようなものがあります。
- JIS規格
- MIL規格
これらの規格を理解することで、用途に応じた適切なケーブルを選びやすくなります。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
JIS規格
JIS規格は日本産業規格として、主に国内で流通するケーブルの特性を体系化しています。
「3C-2V」「5C-FB」といった表記例があり、数字やアルファベットの組み合わせによって外径や内部構造を大まかに把握できます。
太さが増すほど減衰は小さくなりますが、扱いにくくなるといったデメリットも生じます。
国内の放送設備や測定用配線で幅広く利用されるため、入手のしやすさもメリットです。設備保守でも互換品を見つけやすく、長期的なメンテナンス性が期待できるでしょう。
MIL規格
MIL規格は米国軍事規格であり、耐候性や耐久性に厳しい要求が課される点が特徴です。
RG-○○の名称で呼ばれるケーブルが多く、国際的にも広く認知されています。
過酷な振動や高温多湿環境でも使用可能にするため、素材や外形寸法が詳細に定義されています。
軍用基準をベースとしているため信頼度が高く、宇宙開発や航空機などの特殊分野でも採用例があります。海外製品との互換性が求められる場合はMIL規格を選定することで適合しやすくなるでしょう。
高周波ケーブルの種類

高周波ケーブルには、用途や使用環境に応じて、さまざまな種類があります。それぞれの特性を理解し、正しく使い分けることが重要です。
ここでは、代表的な高周波ケーブルの種類を紹介します。
- 高周波測定用ケーブル
- セミフレキシブルケーブル
- セミリジッドケーブル
- TFTケーブル
これらのケーブルは、それぞれ異なる特徴を持っています。使用目的に最適なものを選ぶことが大切です。
高周波測定用ケーブル
高周波測定用ケーブルは、高精度な計測を行うため、低損失と低反射特性を重視したケーブルです。測定器に接続しても位相ズレや減衰を最小限に抑え、正確なデータ取得に寄与します
内部導体の品質や絶縁体の誘電率にこだわり、GHzオーダーでも信号誤差を抑制します。
高性能コネクタとの相性が重要で、SMAやN型などの取り付け精度にも注意が払われます。
研究所や工場検査工程で用いるため、取り回しと信頼性の両方を厳しく管理する必要があります。
セミフレキシブルケーブル
セミフレキシブルケーブルは、外部導体に波状成形された銅管を用いるなど、ある程度の曲げ加工が可能なケーブルです。
フレキシブルケーブルに比べ剛性はやや高めですが、振動や温度変化による特性変動が少ない点が強みです。無線基地局や車載通信システムのように、ある程度の柔軟性と堅牢性が同時に求められる場面で重宝します。
内部には発泡ポリエチレンなどが用いられ、高周波特性を確保しつつ軽量化にも配慮されます。ケーブル配線後に形状を保持しやすいため、設置後の再調整が減り、運用コストを抑制できます。
セミリジッドケーブル
セミリジッドケーブルは、外部導体が完全に金属チューブ状となっており、非常に剛性が高いケーブルです。
曲げ加工は可能ですが、一度成形すると再調整が難しいほど硬い構造を持ちます。その分、高周波領域での位相安定性に優れ、反射が極めて少ない点が魅力です。
宇宙・航空機関連や精密機器内の接続など、厳しい振動環境や高周波回路に用いられます。機械的な強度が高く、長期の使用でも特性変化が生じにくいメリットがあります。
TFTケーブル
TFTケーブルは、フレキシブル性と難燃性を兼ね備え、屋内配線に適したケーブルとして知られています。UL CMP(Plenum)認証品が多く、建物内での火災安全基準を満たすよう設計されているのが特徴です。
外径が細く柔軟性に優れるため、天井裏や壁の中などの狭い空間でも配線しやすいです。
また、絶縁体や外部導体にも耐熱素材を組み合わせ、安定した高周波特性を確保します。
ビルやオフィスの通信ネットワーク、放送設備など多岐にわたる応用が期待されています。
高周波ケーブルの性能を表す指標
高周波ケーブルの性能は、いくつかの重要な指標で表されます。これらの指標を理解することで、用途に適したケーブルを選ぶことが可能です。
ここでは、特に重要な3つの指標について解説します。
- 減衰量
- 特性インピーダンス
- VSWR
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
減衰量
減衰量は、ケーブルを通過する際に発生する信号の損失量で、通常はdB単位で示されます。高周波数になるほど減衰は大きくなりやすく、伝送距離が長くなるほど影響が深刻になります。
太めのケーブルを使えば減衰は抑えられますが、取り回しや価格面での負荷が増大します。そのため、使用周波数と距離、設置条件などを踏まえ、必要最小限の太さを持つケーブルを選ぶ必要があります。
減衰量が小さいケーブルを適切に採用すると、全体の通信品質を大幅に改善できます。
特性インピーダンス
特性インピーダンスは、ケーブル内部の抵抗やリアクタンスを総合した値で、高周波回路の整合を左右する重要な指標です。
50Ωや75Ωが広く普及しており、これらを機器側のインピーダンスに合わせることで信号反射を最小限に抑制します。
外径や絶縁体の誘電率が大きく影響し、設計段階で細心の注意が必要です。もし整合が取れないまま運用すると、送り出した電力の一部が戻ってきてしまい測定誤差や伝送効率の低下を招きます。
最終的にはVSWRなどの値で整合度合いを確認することが多いです。
VSWR
VSWRは電圧定在波比を示し、ケーブルと機器間のインピーダンス整合がどの程度良好かを数値化します。1に近ければ近いほど反射が小さい理想的な状態と見なされ、大きくなるほど伝送ロスや機器への負荷が増します。
高周波帯域を扱う無線設備や高精度の測定系では、VSWRの管理が極めて重要です。
整合不良を放置すると、ケーブル内部で波が行き来して信号が乱れたり、コネクタに過大ストレスがかかったりすることさえあります。
周波数ごとに異なる値が出るため、目的の帯域を見据えてVSWRを改善しながら運用することが大切です。
まとめ

ここまで、高周波ケーブルの構造や性能指標について詳しく解説してきました。
規格や種類ごとの違いを理解し、特性インピーダンスや減衰量、VSWRなどの要素を把握しておくと、目的に適したケーブルを効率よく選べます。
JISやMIL規格に基づいた製品のほか、高精度測定用やセミフレキシブル、セミリジッド、TFTなど用途に応じたタイプが豊富に存在するため、設置環境や周波数帯域、許容電力を考慮して比較検討することが重要です。
インピーダンス整合やVSWRへの対策を徹底すれば、通信や測定時のロスを最小限に抑え、高い品質を確保できるでしょう。
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DC~145GHzまでのマイクロウェーブ帯域で使用可能な同軸ケーブルアセンブリです。※ TCF107、TCF119アセンブリは高柔軟アーマー補強タイプが標準仕様です。
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