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同軸ケーブルとは?知っておきたい基礎知識を分かりやすく解説

同軸ケーブル

    同軸ケーブルは、私たちの日常生活やビジネス環境において、通信やデータ転送などの重要な役割を果たしています。しかし、その構造や機能、種類について詳しく知る機会は少ないかもしれません。

    本記事では、同軸ケーブルの基本から種類や規格について解説します。同軸ケーブルに関する基礎知識を身につけ、適切なケーブル選びや利用方法の理解を深めていきましょう。

    同軸ケーブルとは

    同軸ケーブル(coaxial cable)は、映像などの電気通信で使用される被覆電線の一種です。同軸ケーブルの正式名称は「発泡ポリエチレン絶縁ビニルシース同軸ケーブル」と呼ばれ、高周波信号を効率よく伝送できるという特徴があります。

    ここでは、同軸ケーブルの利用用途とメリットについて解説します。

    同軸ケーブルの利用用途

    同軸ケーブルは、次のような用途や場所で使用されています。

    • LANやCATVなどの高速通信
    • テレビの受信アンテナからの引き込み
    • 放送局や中継所
    • 音声信号や映像信号、マイクロ波信号の伝送
    • 監視カメラ

    同軸ケーブルは、中心導体と外部導体の間に絶縁体が配置されている構造により、電磁干渉(EMI)や高周波干渉(RFI)を効果的に遮断します。そのため、テレビアンテナやケーブルテレビの配線、衛星通信、インターネット接続などの分野で広く使用されています。

    また、同軸ケーブルは耐久性が高い点も特徴です。外部被覆が物理的なダメージから内部の導体を保護するため、厳しい環境下でも信頼性の高い性能を維持します。例えば、屋外に設置されるアンテナケーブルや、建物内の壁を通る配線など、外部の影響を受けやすい場所でも安心して使用できます。

    同軸ケーブルのメリット

    同軸ケーブルには、信号の損失が非常に少ない点や耐久性の高さ以外にも、さまざまなメリットがあります。

    同軸ケーブルは、コストパフォーマンスに優れています。光ファイバーケーブルと比較すると、同軸ケーブルの材料費や設置コストを低く抑えられる点もメリットの一つです。そのため、大規模なネットワーク構築や一般家庭での利用において、コストを削減しながら高品質な通信を実現できます。

    また、同軸ケーブルは互換性が高い点も強みの一つです。多くの既存のデバイスや接続機器が同軸ケーブルを使用しているため、新しい機器を導入する際にも簡単に接続可能です。互換性の高さにより、システムの拡張や更新が行いやすいという利点があります。

    同軸ケーブルの構造

    同軸ケーブルの構造は、複数の層が特定の順序で配置されており、それぞれの層が特定の機能を果たしています。中心に位置するのは「中心導体(心線)」と呼ばれる金属の線で、通常は銅やアルミニウムが使用されます。中心導体は信号を直接伝送するのが役割です。

    中心導体の周りには「絶縁体」が存在し、ポリエチレンやフッ素樹脂などの絶縁素材で作られています。絶縁体は、信号が漏れたり、外部からの干渉を受けたりしないようにするための保護層です。その外側には「外部導体(シールド)」と呼ばれる金属の編み込み銅線が配置されており、外部の電磁波から信号を保護し、内部の信号が漏れ出すのを防ぐ役割を果たします。

    さらに、外部導体の外側には「外部被覆」があります。通常、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレンなどの耐久性のある素材で作られており、物理的なダメージや環境要因からケーブル全体を保護するのが外部被覆の役目です。外部被覆はケーブルの耐久性を向上させ、長期間の使用を可能にします。

    以上のような同軸ケーブルの多層構造により、信号の伝送効率が高まり、外部からの干渉を最小限に抑えることが可能となるのです。

    同軸ケーブルで電子信号を流す仕組み

    同軸ケーブルに同軸コネクタを取り付けると、高周波の電気信号を流せるようになります。同軸コネクタとは、同軸ケーブルと装置をつなげるための部品のことです。同軸ケーブルと同軸コネクタの接続には、次の点が接している必要があります。

    • 同軸ケーブル(内部導体)と同軸コネクタ(中心コンタクト)
    • 同軸ケーブル(外部導体)と同軸コネクタ(本体)

    同軸ケーブルは、中心導体と外部導体の2つが同じ軸上に配置されているのが特徴です。この配置により、電磁波の影響を最小限に抑えつつ、高効率で電子信号を伝送することが可能です。

    電子信号の伝送は、中心導体に電圧をかけることで行われます。この電圧の変化が電子信号として伝わり、受信端で信号として再び処理されます。高周波信号の場合、同軸ケーブルの構造により表皮効果(スキンエフェクト)を利用し、効率的に伝送されるのが特徴です。表皮効果とは、高周波電流が導体の表面近くを流れる現象をいい、これにより信号の損失が減少します。

    さらに、同軸ケーブルは特性インピーダンスが一定であるため、信号の反射や歪みが少なく、安定した伝送が可能です。特性インピーダンスは、ケーブルの設計によって決定され、通常50オームや75オームなどの規格に従います。

    同軸ケーブルの種類

    同軸ケーブルの種類は、用途ごとにさまざまな種類があります。その中でも、次の2つの規格が多く使用されています。

    • JIS規格:日本産業規格
    • MIL規格:米軍調達物資規格

    それぞれの特徴を解説します。

    JIS規格

    JIS規格(日本工業規格)とは、日本国内で使用される同軸ケーブルの品質と性能を保証するための標準規格です。JIS規格に準拠した同軸ケーブルは、工業製品としての信頼性や安全性が高く、特定の用途や環境での使用に適しています。JIS規格には、ケーブルの外径、導体の材質、絶縁体の種類、シールドの構造など、細部にわたって仕様が定められています。これにより、製品間の互換性が確保され、安定した性能を発揮することが可能です。

    JIS規格の同軸ケーブルは、主に日本国内での通信インフラ、放送システム、工業用計測器などで広く使用されています。例えば、JIS規格に準拠したケーブルは、テレビ放送の受信やインターネット接続、さらにはビデオ監視システムなど、さまざまな場面で使用されています。

    さらに、JIS規格に準拠することで、製造業者は製品の品質管理が必須となります。その結果、製品のばらつきを最小限に抑え、一定の性能を維持することが可能なのです。また、JIS規格に準拠した製品は、国際的な規格と比較しても遜色なく、高い信頼性を持っています。

    JIS規格の同軸ケーブルは、特定の環境条件や用途に対する適応性も考慮されており、耐熱性や耐寒性、耐腐食性などの特殊な要件を満たす製品も存在します。そのため、高温多湿な場所や低温の地域においても、性能を発揮し続けられるのもJIS規格のケーブルの強みです。

    MIL規格

    MIL規格(米軍調達物資規格)とは、米国国防総省が定める軍用規格で、軍事用途に適した同軸ケーブルの品質や性能を保証するための基準です。これらの規格は、厳しい環境条件や高い信頼性が求められる状況での使用を前提としており、耐久性や信号の一貫性が極めて重要です。MIL規格に準拠した同軸ケーブルは、過酷な温度変化や振動、湿度、腐食などの厳しい条件下でも優れた性能を発揮します。

    具体的なMIL規格として、MIL-C-17やMIL-DTL-17などが挙げられます。これらの規格は、ケーブルの構造や材質、電気的特性、機械的特性などに関する詳細な要件を示しています。例えば、MIL-C-17規格では、外部シールドの材質や内部絶縁体の特性など、厳密な基準が設けられているのが特徴です。

    さらに、MIL規格に準拠した同軸ケーブルは、航空宇宙や防衛分野だけでなく医療機器や産業用機器など、信頼性が求められる分野でも多く使用されています。MIL規格のケーブルには、通常の商業用ケーブルとは異なり、長期間にわたって安定した性能を提供し続けることが求められます。

    加えて、MIL規格の同軸ケーブルは、厳しい試験と認証プロセスを経てから市場に出回るため、その品質と性能に対してユーザーの高い信頼性があるといえるでしょう。そのため、MIL規格に準拠した同軸ケーブルは、軍事用途に限らず、幅広い産業分野において需要が高まっています。

    まとめ

    今回は、同軸ケーブルの構造や種類などの基礎知識を紹介しました。同軸ケーブルは、家庭や企業のネットワーク、テレビ放送、通信システムなど、さまざまな分野で幅広く使用されている重要な技術です。

    この記事を通じて、同軸ケーブルに関する基本的な理解を深めるとともに、実際の運用に役立つ知識を得られたならば幸いです。同軸ケーブルの基本を理解し、ご自身で選べるように知識を身につけていきましょう。

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