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ミリ波ケーブルの基礎を学ぶ|特徴やメリットを解説

次世代通信システムの進化に伴い、ミリ波ケーブルの重要性が高まっています。特に5G/6G通信システムにおいて、高周波数帯での安定した信号伝送を実現するキーデバイスとして注目を集めています。
本記事では、ミリ波ケーブルの基本的な特徴から開発背景、構造、そして実際の活用シーンまでを総合的に解説します。高周波特性や耐久性など、製品選定の際に考慮すべきポイントについても説明するので、ぜひ参考にしてください。
ミリ波ケーブルとは
ミリ波ケーブルは30GHzを超える高い周波数帯で安定した信号伝送を行うために開発された、特殊な構造と素材を用いたケーブルです。
5Gや自動運転に用いられる車載レーダーなど、超高速の無線通信や精密なレーダー測定が求められる現場で欠かせない存在となっています。
ミリ波ケーブルの特徴
ミリ波ケーブルの最大の特徴は、高周波数帯でも損失を最小限に抑え、信号を劣化させにくい点です。
一般的な同軸ケーブルでは周波数が高まるほど減衰が大きくなりやすく、長距離伝送や高精度通信には向きません。
しかし、ミリ波ケーブルは特殊な導体や絶縁体を組み合わせることで、数十GHz帯でも安定的なデータ伝送を実現します。
また、外径や曲げ半径を工夫し、取り回しのよさと高周波特性を両立させる製品も存在します。車両内部でのセンサー配線や基地局のアンテナ間接続など、限られたスペースでの配線でも活用されやすい構造が選択されるケースが多いです。
ミリ波ケーブルの開発背景
ミリ波ケーブルの登場背景には、通信やレーダー技術の高周波化が急速に進んできたことがあります。
近年普及が加速している第5世代移動通信システム(5G)では、従来の周波数帯だけでは帯域が不足し、数十GHzというより高い領域を利用する必要がありました。既存の同軸ケーブルでは、これほど高い周波数帯で効率よく電波を伝送できないため、新しいケーブルの開発が急務となったのです。
自動運転分野もその一例で、車載レーダーの検知能力を高めるため、ミリ波帯の使用が主流になりつつあります。
従来の24GHz帯に加え、77GHz前後の帯域も視野に入れることで障害物検知の精度を上げ、より安全性の高いシステムを構築することが可能です。
これらの技術革新を支える要として、高周波伝送に優れたケーブルが数多く必要になった結果、ミリ波ケーブルが開発・普及してきたといえるでしょう。
ミリ波ケーブルの材料と構造
ミリ波ケーブルは低損失を目指し、素材の選定から構造設計まで入念に行われます。
内部導体には、電気抵抗を抑えるために銅合金や銀メッキを施した銅などを使用することが多いです。
また、絶縁体にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や低誘電率の特殊樹脂が用いられ、誘電損失をできるだけ抑える工夫がなされています。
外部シールドは外来ノイズを遮断するうえで極めて重要です。金属箔や編組シールドを複数重ねる、あるいは金属チューブ構造にするなど、多層シールドで高いシールド効果を持たせる設計が代表的です。
これらの素材やシールド設計が組み合わさることで、数十GHz帯の信号伝送でも極力損失を減らし、かつ外部からの干渉も抑制できる仕組みが確立されています。
ミリ波ケーブルのメリット

ミリ波ケーブルの大きなメリットとして、高周波帯であっても低い挿入損失を実現しやすい点が挙げられます。
周波数が高くなるほど、ちょっとした導体特性や絶縁体の誘電率差が通信品質に大きく影響します。そこで損失を抑える設計が施されたミリ波ケーブルを使うことで、必要な帯域を無駄なく利用できるのです。
また、ケーブル自身の外径や曲げ半径を抑えている製品も登場しているため、狭いスペースでの配線にも対応できます。
これにより、既存設備を大きく改修せずに高周波化を進めることが可能になります。さらに、外部シールドが強固なため、隣接する機器やケーブルからのノイズ影響を軽減できる利点もあります。
5Gの基地局設置やビームフォーミング技術の導入、車載レーダーの多チャネル化が進む中で、こうしたミリ波ケーブルの性能が欠かせない局面は今後も増えるでしょう。
ミリ波ケーブルの用途
ミリ波ケーブルの用途は多岐にわたりますが、代表的なものとして無線基地局向けのアンテナ周辺配線が挙げられます。
高周波数帯を利用するアンテナには、微小な損失でも大きなロスに直結するリスクが存在します。そこで、損失を可能な限り抑えたミリ波ケーブルを使うことで、通信用の周波数領域をより効率的に活用できます。
車載レーダーでも、衝突防止や自動運転の精度向上のためにミリ波帯の電波が活用されるようになりました。ミリ波ケーブルを活用すれば、車体内部のセンサー類や制御装置の間を高品質に接続でき、レーダーの検知精度を高められます。
また、研究所や工場などの測定環境でも、数十GHz帯の計測器と被測定物間をつなぐケーブルとして頻繁に使用されています。
このように、通信とセンサー技術が進歩するあらゆる領域で重宝され、今後ますます使用範囲が広がっていくと予想できるでしょう。
ミリ波ケーブルの課題
高周波伝送を実現するうえで有用なミリ波ケーブルにも、いくつかの課題があります。
最大のハードルの一つが、製造コストの高さです。
精密な導体加工や特殊樹脂、複数のシールド層など、高度な工程を必要とするため、生産コストが上昇しやすい傾向があります。
また、取り扱いに気を使わなければならない点も注意するポイントです。曲げ半径の制限やコネクタ装着の際の注意など、高周波特性を損ねないように厳重な品質管理が求められます。
特に数十GHz帯では、わずかな機械的変形や接触不良でも測定値や通信品質を著しく低下させるおそれがあります。
さらに、量産時のバラつきを抑えることも課題です。高周波性能は導体断面の一部が変わるだけでも影響を受けるため、安定した品質を保つには厳密な検査工程が必須となります。
まとめ

ミリ波ケーブルは、高周波帯でも低損失かつ高いシールド性を発揮する、最先端のケーブル技術といえます。
従来の同軸ケーブルよりも厳しい加工精度や素材選定が必要ですが、その分、5Gや自動運転用のレーダーなど高度な通信・検知分野で大きなメリットをもたらします。
今後、これらの課題を克服する技術開発が進むことで、ミリ波ケーブルの活用範囲はさらに広がっていくことでしょう。
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