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同軸ケーブルのインピーダンスとは?基礎知識と計測方法を徹底解説

    同軸ケーブルは、テレビ放送やインターネット通信、音声信号伝送など、さまざまな用途で広く使用されています。

    その中でも、インピーダンスは同軸ケーブルの性能において重要な要素です。本記事では、同軸ケーブルのインピーダンスの基礎知識や、測定方法について分かりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。

    同軸ケーブルのインピーダンスとは

    同軸ケーブルのインピーダンスとは、電気信号がケーブル内を流れる際に生じる電気的な抵抗値のことを指します。特定の周波数において信号のエネルギー伝送効率を最適化するために重要な特性です。

    通常、同軸ケーブルのインピーダンスは50Ω(オーム)または75Ωに分けられており、これはケーブルが接続される機器やアプリケーションに応じて選ばれます。

    50Ωは主に無線通信やデータ伝送に使用され、75Ωはテレビやビデオ信号の伝送に適しています。インピーダンスは、ケーブル内部の中心導体と外部導体の直径比や、使用される絶縁体の誘電率によって決定されるのが特徴です。

    インピーダンス特性を合わせることは「インピーダンスマッチング」や「インピーダンス整合」と呼ばれています。回路やケーブルのインピーダンスが合っていない状態は「インピーダンス不整合」と表現され、この状態では高周波信号を正しく伝送することができません。

    インピーダンスが適切でない場合、信号の反射や減衰が発生し、通信品質が低下する可能性があります。したがって、接続する機器とケーブルのインピーダンスを一致させることは、信号品質を維持し、システム全体の効率を最大化するために非常に重要です。

    インピーダンスのケーブルを正しく選択することで、信号の反射や損失を最小限に抑えることができます。

    同軸ケーブルのインピーダンス測定方法

    インピーダンスの測定には専用の測定器を使用し、計算による理論値の確認も行います。これらの方法を組み合わせることで、より信頼性の高い測定が可能になります。

    特性インピーダンスの測定方法

    特性インピーダンスの測定方法にはいくつかの手法がありますが、代表的なものにはTDR(Time Domain Reflectometry)法とネットワークアナライザーを使用した方法があります。

    TDR法は、同軸ケーブルのインピーダンスの変化を時間領域で測定する手法で、ケーブルの不連続点や損傷箇所を特定するのに適しています。TDR装置は、ケーブルに短い時間のパルスを送り、その反射波形を解析することで、インピーダンスの不整合を検出します。この方法は、特に長距離のケーブルや埋設されたケーブルの診断に有効です。

    一方、ネットワークアナライザーを用いた測定方法は、より広範な周波数範囲でのインピーダンス特性を評価するのに向いています。この装置は、ケーブルに対して周波数を変えながら信号を送信し、その応答を測定することで、ケーブルの周波数特性やインピーダンスの周波数依存性を詳細に分析します。この手法は、特に高周波領域での測定が必要な場合や、ケーブルの設計段階での評価に有用です。

    測定を実施する際には、ケーブルの両端を適切に接続し、外部のノイズを最小限に抑えることが重要です。正確なインピーダンス測定は、システムの信号損失を最小化し、通信品質の向上に寄与します。適切な測定機器とプロセスを選択することで、同軸ケーブルの性能を最大限に引き出すことが可能になります。

    特性インピーダンスの計算方法

    同軸ケーブルの特性インピーダンスは、ケーブルの物理的な構造から計算できます。計算には中心導体の直径、絶縁体の直径、および絶縁体の誘電率が必要です。これらの値を専用の計算式に当てはめることで、理論上の特性インピーダンスを求めることができます。

    特性インピーダンスは、伝送線路の物理的構造と使用される材料の特性によって決定され、以下のような式で計算できます。

    Z=√Zo×√Zs

    Zoは同軸ケーブル先端を開放したときのインピーダンス、Zsは先端を短絡したときのインピーダンスです。

    参考:日置電機株式会社(2025年1月)「【LCR】同軸ケーブルの特性インピーダンスの測定方法」、日置電機株式会社 – Hioki、URL(https://hiokisupport.zendesk.com/hc/ja/articles/9370515977999–LCR-%E5%90%8C%E8%BB%B8%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB%E3%81%AE%E7%89%B9%E6%80%A7%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%AE%E6%B8%AC%E5%AE%9A%E6%96%B9%E6%B3%95)。

    ただし、実際の製造過程での誤差や使用環境の影響により、計算値と実測値に多少の違いが生じることがあります。

    インピーダンスマッチングとは

    インピーダンスマッチングは、電気回路や通信システムにおいて、信号の反射を最小限に抑え、電力伝送の効率を最大化するための技術です。

    ここではインピーダンスマッチングの意味と方法を解説します。

    インピーダンスマッチングの意味

    インピーダンスマッチングとは、信号の伝送路全体で電気的な特性を整合させることを意味します。特に高周波信号を扱う場合、送信側のインピーダンスと受信側のインピーダンスが一致していないと信号が反射し、伝送効率が低下します。この現象を防ぐために、インピーダンスマッチングが行われます。

    インピーダンスマッチングが不適切だと、信号が反射して戻ることで、伝送路上での信号劣化やノイズの増加を引き起こす可能性があるので注意が必要です。

    特に高周波回路やアンテナ設計では、このマッチングが重要視され、適切なインピーダンスマッチングを行うことで、通信の品質やシステム全体の性能が大幅に向上します。

    インピーダンスマッチングを実現するためには、特定の抵抗やコンデンサ、インダクタなどの電子部品を用いることが一般的です。これらの部品を組み合わせることで、回路の特性を調整し、狙ったインピーダンスを達成します。

    また、同軸ケーブルなどの伝送路を使用する際には、ケーブル自体の特性インピーダンスに合わせたマッチングが求められます。これにより、信号の伝送効率を最大化し、通信の安定性と信頼性を確保することができます。

    インピーダンスマッチングの方法

    アンテナ回路でインピーダンスマッチングを行う方法

    アンテナ回路でのインピーダンスマッチングは、しばしばマッチングネットワークを使用して行います。L型、T型、π型などのフィルタ構成を用いることで、回路全体の特性インピーダンスを調整し、50Ωや75Ωに近づける手法が一般的です。

    アンテナで受信した微弱な信号を効率よく処理するためには、低雑音アンプ(LNA)までの伝送経路を最適化する必要があります。特に重要なのは、アンテナからアンプまでの配線を可能な限り短くして伝送損失を抑えることと、インピーダンスを正しく整合させて信号の反射を防ぐことです。

    テレビ電波を受信するアンテナでは、受信した信号をブースターアンプで増幅してから建物内に配線するのが一般的です。この際、アンテナとアンプの接続には75Ωの同軸ケーブルを使用し、できるだけ短い距離で低損失ケーブルを使って配線することが重要です。

    なお、減衰器を入れると雑音指数が上がり、受信感度が大きく低下してしまうため、VSWRの値が悪い場合でもこの区間に固定減衰器を挿入するのは避けたほうがよいでしょう。

    アイソレータを挿入する方法

    専門的な機器では、定在波による周波数特性の劣化を防ぐために、アイソレータを活用する方法があります。アイソレータを機器の入力端や出力端に取り付けることで、使用する周波数帯域での信号品質を維持することが可能です。

    アイソレータの挿入は特に高周波帯域での運用において重要です。高周波では、微小なインピーダンス不整合でも大きな損失を引き起こす可能性があるため、アイソレータを用いて確実な信号伝送を確保することが求められます。

    適切なアイソレータを選択する際には、周波数帯域、挿入損失、アイソレーション性能などの特性を考慮し、自身のシステムに最適なものを選ぶことが大切です。これにより、通信システムのパフォーマンスが大幅に向上し、信号品質の向上が期待できます。

    インピーダンス変換器を挿入する方法

    インピーダンス変換器は、送信側と受信側のインピーダンスが異なる場合に、不一致を解消する役割を果たします。インピーダンス変換器は、異なるインピーダンスのデバイス間での接続を可能にするため、システム設計の柔軟性を高めます。

    例えば、50Ωの出力インピーダンスを持つ信号発生器を、75Ωの電測計に接続して測定を行う場合、インピーダンスの違いにより信号の反射が発生し、正確な測定ができません。そこでインピーダンス変換器を用いて、両者のインターフェースを最適化します。インピーダンス変換器で互換性の問題を解決すれば、安定した通信を実現できます。

    変換器には、抵抗型、トランス型、ストリップライン型などさまざまな種類があり、用途に応じて選択できます。変換器を使用する際は、変換後のインピーダンスに合わせた同軸ケーブルを選ぶことで、信号の伝送効率を最大限に高めることが可能です。インピーダンス変換後は、変換後の値に合った同軸ケーブルを使用して機器を接続します。75Ωに変換した場合は、75Ωの同軸ケーブルを使用して機器を接続しましょう。

    50Ωと75Ωの同軸ケーブルの選び方

    50Ωと75Ωの同軸ケーブルは、用途と特徴が異なります。まずはそれぞれの特徴をおさらいしておきましょう。

    50Ωの同軸ケーブルは、主に無線通信機器やデータ伝送システムで使用されます。携帯電話システムやGPSアンテナ、各種測定器など、高い電力処理能力が必要な場合に適しています。50Ωのケーブルは、電力処理能力と信号損失のバランスが優れており、無線機器との相性が良いのが特徴です。

    一方、75Ωの同軸ケーブルは、テレビやビデオ信号の伝送に最適な特性を持っています。ケーブルテレビや衛星放送の受信など、映像信号を扱う機器で広く使用されています。信号の減衰が少なく、静電容量も低いため、長距離での信号伝送にも向いています。

    ケーブルを選ぶ際の重要なポイントは、接続する機器の用途です。無線通信やデータ伝送には50Ωを、テレビやビデオ信号には75Ωを選択しましょう。また、配線距離が長い場合は、信号の減衰を抑えるために適切な太さのケーブルを選ぶ必要があります。ただし、太いケーブルは取り回しが難しくなる場合があるので、設置環境も考慮に入れましょう。

    さらに、使用する周波数帯域に対応したケーブルを選ぶことも重要です。また、50Ωと75Ωではコネクタの形状が異なることがあるため、接続する機器との互換性も確認が必要です。同軸ケーブルを選ぶ際は、接続する機器のインピーダンスを確認し、それに合わせたケーブルを選ぶことで、最適な信号伝送が可能になります。

    まとめ

    同軸ケーブルのインピーダンスは信号の送信品質を左右する重要な要素です。適切なインピーダンスのケーブルを選び、正しくマッチングを行うことで、高品質な信号伝送を行えるようになります。

    用途に応じて50Ωと75Ωの中から適切なケーブルを選択し、必要な場合はインピーダンス変換器を使用することで、信号の損失を最小限に抑えた効率的なシステムを構築できます。

    高品質な信号伝送を実現するために、この記事で紹介したケーブルの特徴や選び方を参考に、目的に合った同軸ケーブルを選択してください。

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