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5Gの周波数「ミリ波」「SUB6」とは?違い・メリット・デメリットを徹底解説

    次世代の通信規格「5G」が私たちの周りで普及し始めています。高速・大容量、低遅延、多数同時接続といった特徴で、生活やビジネスに大きな変化をもたらすと期待されています。しかし、その性能を深く理解するには「周波数」の知識が欠かせません。

    この記事では、「ミリ波」と「Sub6」という5Gで使われる主要な周波数帯の違いを中心に、5Gの仕組み、メリット、そして知っておきたいデメリットや今後の展望までを詳しく解説します。5G時代の核心技術である「周波数 5G」についての基礎知識を学んでいきましょう。

    周波数の5Gとは

    周波数と5Gの関係は、多くの人が「なぜ通信速度が速くなるのか」を気にする重要なポイントです。まず、周波数と5Gの基本について解説します。

    周波数とは

    周波数とは、電波や音波のような波が1秒間に繰り返す回数のことを指します。単位はHz(ヘルツ)で表され、例えば1秒間に100回波が振動すれば100Hzとなります。

    スマートフォンやテレビ、ラジオなどが通信を行うためには、この電波が利用されており、それぞれの電波には異なる周波数が割り当てられています。

    周波数が高いほど、波長(波一つ分の長さ)は短くなり、一度に多くの情報を運ぶことができますが、遠くまで届きにくく、障害物の影響を受けやすいという性質があります。逆に、周波数が低いほど波長は長くなり、遠くまで届きやすく、障害物にも比較的強いですが、一度に運べる情報量は少なくなります。

    5Gとは

    5Gとは、「第5世代移動通信システム」の略称で、4Gよりもさらに高速・大容量・低遅延を実現する通信規格です。動画のストリーミングやオンラインゲームなどの負荷の高いサービスはもちろん、産業用ロボットや自動運転などにも適用が期待されています。

    5Gの主な特徴は次のとおりです。

    • 高速・大容量
    • 低遅延
    • 多接続

    5Gは従来の4Gと比較して格段に通信速度が向上し、一度に扱えるデータ量も飛躍的に増加しました。そのため、動画のダウンロード時間が大幅に短縮され、より高画質な映像コンテンツを楽しむことが可能です。

    また、5Gは通信におけるタイムラグが極めて少なく、遠隔医療や自動運転など、リアルタイム性が求められる分野での活用が期待されています。

    そして、5Gではスマートフォンだけでなく、家電製品や自動車など身の回りのあらゆるモノが同時にインターネットへ接続可能となりました。これにより、自動運転やスマートシティなどのあらゆる場面で普及が進むと見込まれています。

    5Gで使われるおもな周波数

    5G通信を実現するためには、その特性に適した周波数の電波が利用されます。5Gで主に使われる周波数帯は、それぞれ異なる特徴を持っており、それらを理解することが5Gの能力を把握する上で重要です。

    5Gで使われる主な周波数は以下の3つです。

    • Sub6
    • ミリ波
    • NR化        

    それぞれを比較した一覧表は以下のとおりです。

    特徴Sub6ミリ波NR化
    周波数帯域6GHz未満28GHz帯など (30GHz~300GHzの一部)既存の4G周波数帯 (例: 700MHz帯~3.5GHz帯)
    通信速度比較的速い超高速4Gよりは速いがSub6やミリ波には劣る
    遅延低遅延超低遅延4Gよりは低遅延
    カバーエリア比較的広い狭い広い(既存4Gエリアを活用)
    障害物への強さ比較的強い弱い比較的強い
    主な役割5Gエリアの広範囲なカバー、安定した通信の提供特定エリアでの超高速・大容量通信の提供5Gエリアの早期拡大、接続機会の向上
    基地局既存4G基地局を一部活用可能多数の新規設置が必要既存4G基地局を最大限活用可能

    SUB6

    Sub6とは、5Gで利用される周波数帯の一つで、6GHz未満の周波数帯を指します。この周波数帯は、4G(LTE)で使われている周波数帯に近い特性を持っています。

    そのため、電波が比較的遠くまで届きやすく、建物などの障害物があっても回り込んで電波が届きやすいところがメリットです。この性質から、広いエリアをカバーするのに適しており、既存の4G基地局の設備を一部活用しながら5Gエリアを効率的に広げることが可能です。

    一方で、ミリ波と呼ばれるさらに高い周波数帯と比較すると、一度に運べるデータ容量(通信速度)はやや劣るという側面もあります。しかし、そのバランスの良さから、5Gの普及初期段階においてエリア展開の中心的な役割を担っています。

    ミリ波

    NR化とは、既存の4Gで使用されている周波数帯を5Gでも利用できるようにする技術のことです。

    5G専用の新しい周波数帯であるSub6やミリ波だけでなく、これまで4Gに使われてきた周波数帯を5Gの技術で活用することで、より迅速かつ広範囲に5Gエリアを展開することが可能になります。

    具体的には、DSS(Dynamic Spectrum Sharing:動的周波数共用)という技術を用いて、同じ周波数帯を4Gと5Gのユーザーで効率的に分け合って利用します。これにより、通信事業者は新たな周波数帯の割り当てを待つことなく、既存の基地局設備を最大限に活用しながら5Gサービスを提供開始できるというメリットがあります。

    ただし、NR化された周波数帯の通信速度や容量は、もともと4G向けに設計されているため、Sub6やミリ波といった5G専用周波数帯ほどの高いパフォーマンスは期待できません。それでも、5Gエリアの早期拡大と、ユーザーが5Gに接続しやすくなるという点で重要な役割を担っています。

    周波数 5Gがもたらすメリット

    5G通信が実用化されることで、私たちの生活や社会にはさまざまな恩恵がもたらされます。そのメリットは、利用される周波数帯の特性によっても異なります。

    ここでは、5Gで使われる主要な周波数帯であるSub6とミリ波が、それぞれどのようなメリットを提供してくれるのかを解説します。

    SUB6のメリット

    Sub6周波数帯を利用する5Gは、特に初期の5G展開において中心的な役割を果たしています。

    まず、電波が比較的遠くまで届きやすく、建物などの障害物にもある程度強いという特性から、広いエリアを効率的にカバーできる点が挙げられます。これにより、都市部だけでなく郊外や地方においても、比較的早期に5Gの恩恵を受けやすくなります。

    また、既存の4G基地局の設備を一部流用しながら5Gネットワークを構築できるため、通信事業者にとっては設備投資のコストを抑えつつ、スムーズに5Gエリアを拡大できるという利点もあります。

    さらに、ミリ波ほどの超高速通信ではないものの、4Gと比較すれば十分に高速で大容量な通信が可能です。そのため、高画質な動画視聴やオンラインゲームなど、多くのユーザーが日常的に利用するサービスにおいて、より快適な通信環境を提供できます。

    これらのメリットから、Sub6は5Gの普及と安定的なサービス提供において基盤となる役割を担っています。

    ミリ波のメリット

    ミリ波周波数帯を利用する5Gには、その特性からSub6とは異なるメリットがあります。

    最大のメリットは、圧倒的な「超高速・大容量通信」です。

    ミリ波はSub6よりもはるかに広い帯域幅を利用できるため、映画のような大容量データも数秒でダウンロードしたり、遅延なく高精細なVR(仮想現実)やAR(拡張現実)コンテンツを楽しんだりすることが可能になります。

    これにより、エンターテインメント体験が飛躍的に向上するだけでなく、産業分野においても大きな革新が期待されます。

    もう一つのメリットは、「超低遅延」です。

    通信のタイムラグが極めて小さくなるため、遠隔地にいる医師がロボットアームを操作して手術を行ったり、工場の機械をリアルタイムで精密に制御したりするなど、即時性が求められる高度な応用が実現可能になります。

    また、多数のデバイスを同時に接続できる「多接続」の特性も、ミリ波の広い帯域幅によってさらに強化されます。スタジアムや大規模イベント会場など、人が密集する場所でも安定した通信環境を維持しやすくなるでしょう。

    これらのメリットにより、ミリ波は未来の社会インフラを支える革新的な技術として、その活用に大きな期待が寄せられています。

    周波数 5Gのデメリットと課題

    5G通信は多くのメリットをもたらしますが、その一方で、利用される周波数帯の特性に起因するデメリットや、克服すべき課題も存在します。

    特にSub6とミリ波は、それぞれ異なる性質を持つため、抱える問題点も異なります。

    ここでは、5Gの周波数帯に起因するデメリットについて解説します。これらの点を把握することで、5G技術の現状と今後の発展に向けた取り組みについて、より現実的な視点を持つことができるでしょう。

    SUB6のデメリット

    Sub6周波数帯を利用した5Gは、エリアカバーの広さや導入のしやすさといったメリットがある一方で、いくつかのデメリットも抱えています。最も大きな点は、ミリ波帯と比較して通信速度が劣るという点です。

    5Gの大きな特徴である「超高速・大容量」というイメージに対して、Sub6だけではその恩恵を最大限に享受できない場合があります。特に、非常に大きなデータ通信や、極めて低い遅延が求められるような最先端のサービスにおいては、Sub6の性能では不十分となる可能性があります。

    また、世界的に見ると、Sub6として利用できる周波数帯域が国や地域によって異なり、利用可能な帯域幅が限られている場合もあります。

    帯域幅が狭いと一度に通信できるデータ量も制限されるため、期待されるほどの速度が出ないケースも考えられます。さらに、既存の4G周波数帯に近いこともあり、電波の干渉対策など、きめ細やかなエリア設計が求められる場合もあります。

    これらのデメリットを理解した上で、ミリ波との適切な使い分けや技術的な工夫が、今後の5Gサービスの品質向上には不可欠です。

    ミリ波のデメリット

    ミリ波は5Gの超高速・大容量通信を実現する上で非常に重要な周波数帯ですが、その特性ゆえのデメリットもいくつか存在します。

    最も大きな課題は、電波の直進性が非常に強く、障害物に極めて弱いという点です。壁や建物はもちろんのこと、雨や霧、さらには人の体でさえも電波を遮ったり減衰させたりする可能性があります。

    このため、ミリ波で安定した通信エリアを確保するためには、非常に多くの基地局を短い間隔で設置する必要があり、インフラ整備に時間とコストがかかります。

    また、電波が遠くまで届きにくいため、一つの基地局でカバーできる範囲がSub6に比べて格段に狭くなります。これは、特に広いエリアをカバーする必要がある地方や屋外での利用において大きな制約となります。

    さらに、ミリ波に対応したスマートフォンやデバイスは、Sub6のみに対応した機種と比較して、アンテナ設計が複雑になるなどの理由から、製造コストが高くなる傾向があり、端末価格にも影響を与える可能性があります。

    これらのデメリットを克服するために、ビームフォーミング技術(特定の方向に電波を集中させる技術)の高度化や、より効率的な基地局配置の研究が進められています。

    周波数 5Gの今後

    5G技術はまだ発展途上にあり、今後さらなる進化が期待されています。

    通信速度の向上やエリアの拡大はもちろんのこと、新たなサービスの創出に向けて、周波数の利用方法も進化していくと考えられます。

    この章では、5Gの将来像を形作る上で重要な要素となる周波数の動向について解説します。

    具体的には、以下のポイントに焦点を当てます。

    ● 新たな周波帯域の割り当て
    ● 技術的な課題

    これらの情報を通じて、5Gが今後どのように私たちの社会を変革していくのか、その可能性を探っていきましょう。

    新たな周波帯域の割り当て

    5Gの性能を最大限に引き出し、多様なニーズに応えるためには、現在利用されている周波数帯に加えて、新たな周波数帯域の確保と割り当てが不可欠です。

    特に、より高速・大容量な通信を実現するため、ミリ波よりもさらに高い周波数帯(例えば、テラヘルツ波など)の研究開発が進められています。これらの未開拓な周波数帯は、膨大な帯域幅を確保できる可能性を秘めており、将来の6G(第6世代移動通信システム)も見据えた次世代通信技術の基盤となることが期待されるでしょう。

    また、既存の周波数帯についても、より効率的に利用するための再編や追加割り当てが検討されています。例えば、テレビ放送や衛星通信などで利用されている周波数帯の一部を、5Gなどの移動通信システムに転用する動きも世界的に見られます。

    これにより、限られた周波数資源を有効活用し、5Gサービスのさらなる高度化と普及を促進することを目指しています。ただし、新たな周波数帯の割り当てには、国際的な調整や既存の無線システムとの共存、電波の人体への影響評価など、慎重な検討と準備が必要です。

    技術的な課題

    5Gの普及と高度化が期待される一方で、その実現にはいくつかの技術的な課題を克服していく必要があります。

    まず、ミリ波のエリア展開は依然として大きな課題です。ミリ波は障害物に弱く、カバーエリアが狭いため、きめ細やかな基地局設置が不可欠ですが、これには莫大なコストと時間がかかります。より効率的かつ低コストでミリ波エリアを構築するための技術開発や、新しい設置方法の考案が求められています。

    次に、消費電力の問題も挙げられます。5G、特にミリ波を利用した通信は、4Gと比較して基地局や端末の消費電力が大きくなる傾向があります。環境負荷の低減やバッテリー持続時間の観点から、省電力化技術のさらなる向上が重要です。

    さらに、5Gの特徴である「超低遅延」をより多くのアプリケーションで実現するためには、ネットワーク全体の最適化やエッジコンピューティング技術の進化が必要です。

    また、5Gの多接続性を活かしたIoT(モノのインターネット)デバイスの普及に伴い、セキュリティ対策の強化も喫緊の課題となります。これらの技術的な課題を一つ一つクリアしていくことが、5Gのポテンシャルを最大限に引き出し、真に社会を変革する力となるでしょう。

    まとめ

    この記事では、5G通信の核心とも言える「周波数」に焦点を当て、その基本的な知識から、5Gで利用される主な周波数帯であるSub6やミリ波の特徴、それぞれのメリット・デメリット、そして今後の展望に至るまでを解説しました。

    今後、5Gがさらに身近になる中で、その仕組み、特に「周波数」の特性を理解しておくことは、新しい技術をより深く知り、活用していく上で役立つはずです。

    5G技術は、社会に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。周波数帯の特性を正しく理解することが、スマホ選びからIoTビジネスやスマートシティ施策まで、次世代サービス戦略のカギとなるでしょう。

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