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UL電線とは?基礎知識から種類や選び方まで分かりやすく解説

北米で使用されるUL電線は、厳格な安全基準をクリアした高品質の電線です。日本の電線とは異なる規格や表記方法が採用され、難燃性や耐電圧性にも特徴があります。
ULマークを取得した製品は北米市場での信頼の証となり、市場進出の鍵を握ります。本記事ではUL電線の基本定義から種類・特性、適切な選び方を解説します。
UL電線とは
UL電線とは、北米の安全規格であるUL(Underwriters Laboratories)の認証を受けた電線のことです。主にアメリカやカナダなどで用いられ、家庭用や産業用の幅広い機器に採用されています。
北米では電気火災や感電事故を防ぐため、厳格な基準を設けて部材を管理します。UL電線はその基準に合致し、高い信頼性と安全性が期待されます。一方、アジア圏やヨーロッパ圏での安全認証とは別の規格体系を持つのが特徴です。
北米市場を視野に入れた製品づくりでは、UL電線の選定が欠かせません。電線の種類と性能を理解し、機器の要件に応じた正しい選択をする必要があります。
UL電線と日本の電線との違い
UL電線と日本の電線には、いくつかの相違点があります。
具体的には以下のポイントが大きな特徴です。
- 規格
- 表記方法
- 定格電圧の表記
- 難燃性
北米と日本では安全基準や技術要件が異なるため、それぞれの区分を知っておくと選定時に役立ちます。ここでは、それぞれの違いを詳しく解説します。
規格
日本の電線は国内の電気用品安全法やJIS規格に準拠します。一方、北米で流通するUL電線はUL基準をはじめとする米国の安全規定を満たします。
UL規格は安全性と性能に関するテストを経て認証を得る方式です。これにより、許容温度や難燃性、耐電圧といった性能に一定以上の信頼が置けます。
日本の規格と同様、UL規格でも導体や絶縁材の品質を厳しく評価します。ただし、日本仕様の電線をそのまま北米に持ち込むと、ULマークがないため使用できないことがあります。
海外で製品を販売する際は、UL規格に合致した電線を使っているかが重視されます。認証なしでは輸出が困難になる場合もあるため注意が必要です。
表記方法
UL電線には「AWG(American Wire Gauge)」によるサイズ表記がよく用いられます。AWGは北米標準の導体サイズ規格で、数字が小さいほど太い導体を指します。
日本の電線はSQ(平方ミリメートル)表記が一般的です。例えば「1.25mm²」や「2.0mm²」のような形で導体断面積を示します。
AWGとSQでは値の変換が必要となる場合があり、同じ太さでも名称が変わります。12AWGはおおむね3.3mm²に相当するなど、置き換えの際は一覧表を確認すると便利です。
電線への印字も異なり、UL電線にはULマークと番号、温度定格などが表記されます。日本の電線はPSEマークやJISマークが印字されるケースが多いです。
定格電圧の表記
UL電線では600Vなど、整数値の電圧表記が一般的です。この数字は電線が連続的に耐えられる最大使用電圧を示します。
日本の電線は一般的に300Vや600V対応などの記載がありますが、JIS規格内で定義されています。両者の電圧範囲は重複する部分がありますが、試験方法や許容範囲に若干の違いがある場合があります。
ULマークの横には定格電圧に加え、耐熱温度や難燃性を示す記載も含まれます。使用環境に応じて、電圧だけでなくほかの性能指標を総合的に確認する必要があります。
設計段階で機器の動作電圧と使用環境を踏まえて電線選定を行うことが重要です。安全性と効率性の両立を図るため、適正な定格電圧を把握する必要があります。
難燃性
UL電線は燃え広がりにくい設計が求められています。具体的にはUL94規格などにより、難燃グレードの分類が細かく定義されます。
日本の電線にも耐燃性能を重視した製品は存在しますが、北米の基準と試験方法は異なる点があります。ULの試験は炎源を当てる時間や複数回の試験環境などを設けて厳しく評価するのが特徴です。
多くのUL電線では、炎にさらされた際の自己消火性や発煙量を考慮して設計されています。機器内部の火災リスクを軽減することが重要視されるため、難燃性能は必須といえるでしょう。
難燃性の等級が高いほど、配線の安全性や保護力が高まります。火災対策が義務付けられる施設や製品開発では、特にUL基準が尊重されます。
UL電線の種類

UL電線は用途別に多くのバリエーションがあります。
大きく分けると以下の3種に分類され、それぞれ性能や機能が異なります。
- 汎用電線
- 特定用途電線
- 特定規格電線
これらの区分を把握すると、実際に配線や設計を行う際にスムーズです。必要に応じて、温度特性や難燃等級などの詳細を確認して選定することが重要です。
汎用電線
汎用電線は、家電やオフィス機器など幅広い用途で使われます。代表的な製品としてUL1007やUL1015といった規格番号がよく挙げられます。
耐電圧や許容温度など、基本的な性能がバランスよく整っている点が特徴です。被覆材にはPVC(ポリ塩化ビニル)が用いられることが多く、取り扱いやすさと適度な柔軟性を兼ね備えています。
汎用電線はコストパフォーマンスがよく、さまざまな環境で使用できます。ただし、高温や強い振動、特殊な薬品にさらされる場合は、より専門性の高い電線が必要です。
また、さまざまな製品が出回っているため、用途に応じた適正サイズを選ぶことが大切です。汎用とはいえ、UL認証を確実に取得しているか確認することをおすすめします。
特定用途電線
特定用途電線は、高温環境や耐油性、耐薬品性など特定の要件を満たすよう設計されています。例えばULフッ素樹脂電線は、通常の電線では対応できない高温環境での連続使用を可能にする製品です。
これらの電線は高温下での絶縁性能維持や延焼防止性能に優れた特殊材料を使用しており、過酷な使用条件においても信頼性の高い性能を発揮します。そのため、工場の自動化ラインや産業ロボットのケーブルとして、多く採用されています。
被覆材にはフッ素樹脂をはじめ、シリコーンゴムなど多様な素材が選択可能です。ただし、用途に合わせて材質と規格を厳選しないと、絶縁不良や被覆の劣化が生じるおそれがあるので注意が必要です。
また、特定用途電線には、医療機器向けや極低温下での使用に耐える特化型も存在します。用途に応じた耐久性を追求した結果、コストが高くなるケースもあります。
特定規格電線
特定規格電線は、業界や環境に合わせた追加の規格要件を満たす電線です。例として、ULとCSA(カナダ規格協会)の両方に対応する「UL/CSA電線」があります。
これらの電線は北米全域で使いやすいように、複数の認証を取得し、汎用性を高めているのが特徴です。また、船舶用や鉄道用、軍事用など特殊環境下での使用を想定した規格も存在します。
特定規格電線は一般の汎用電線や特定用途電線と比べ、取得すべき試験や認証が多くなる傾向があります。その分、安全性や信頼性がより厳しく保証されるため、重要設備での採用が多いです。
同じUL電線の分類でも、特定規格電線は独自のマークや認証番号が付与されることがあり、必要な認証を得ているかどうかを調べることで、適切な製品か判断しやすくなります。
UL電線の特性
UL電線は安全性と信頼性が重視されるため、特性面で優れています。
主な特徴としては次のとおりです。
- 耐熱性
- 耐電圧性
- 導電性
- 柔軟性
それぞれの性能がどのようなシーンで役立つのかを見ていきましょう。
耐熱性
UL電線は定められた温度範囲で安定して使用できます。多くの製品では105℃や125℃といった具体的な最高許容温度が明示されており、この温度範囲内であれば絶縁性能や機械的特性を長期間維持できるよう設計されています。
高温環境に対応するUL電線では、フッ素系樹脂(PTFE、FEP、ETFEなど)が被覆材料として採用されることが多くあります。これらの素材は高温条件下でも優れた絶縁性能を維持し、電気的なスパークや過熱による絶縁破壊などのトラブルを効果的に防止可能です。
このような耐熱性の高い電線は、高温になりやすい環境での配線に不可欠な要素となっています。ただし、指定された最高温度以上の条件下で長期間使用すると劣化が進む可能性があります。
そのため、長期的な信頼性を確保するためには、実際の使用環境における最高温度を正確に把握し、適切な温度規格の電線を選定することが重要です。
耐電圧性
UL電線は定格電圧の範囲内で安全に運用できるよう設計されています。600V対応のものからさらに高圧に耐えるものまで、さまざまなラインナップがあります。
製造段階で厳しい絶縁試験や耐電圧試験をクリアしている点が特徴です。この試験により、必要な絶縁強度を保っているかを判断します。
外部のノイズが多い産業用機器や、高電圧を扱う装置でも信頼して使えます。ただし、使用条件が定格電圧を超えると危険が増すため、適正な選定が必須です。
高電圧回路に用いる場合は、絶縁材の品質と被覆の厚みにも注目するとよいでしょう。定格に合わない選定は機器の故障や安全リスクを引き起こす原因となります。
導電性
UL電線の導体材料としてもっとも広く採用されているのは銅(Cu)です。銅は優れた導電性を持ち、電気抵抗が低いため、信号伝送時のエネルギー損失や発熱を最小限に抑えられます。
UL電線の導体サイズは規格に基づいて標準化されており、必要な電流容量や配線距離に応じて最適な導体径を選定することが可能です。銅以外の金属をメッキした導体を使用する場合もあり、酸化を防いで接触抵抗を低減できます。
導電性を適切に保つためには、電流容量と発熱量のバランスが重要です。効率よく電力を送ることで、機器全体のパフォーマンスが向上します。
柔軟性
UL電線には、機器内部の限られたスペースや可動部での配線を想定し、柔軟性を重視した製品もあります。PVC被覆の汎用電線や、シリコーンゴム被覆など、用途に合わせて柔らかさが変わります。
設備の配置変更が多いオフィス機器や、ロボットアームなど継続的に動作する可動部では、特に高い柔軟性を持つ電線が求められます。被覆材が割れにくく、繰り返し曲げにも耐えられる設計であることが重要です。
ただし、柔軟性の高い素材は高温や薬品に対する耐性が低下することがあります。そのため、使用環境に合わせて、柔軟性と耐久性のバランスを考慮しなければなりません。
高い柔軟性のUL電線は取り回しがしやすく、配線作業の効率を向上できるのがメリットです。スペースの限られた装置でもスムーズに配線できるため、設計の自由度が広がります。
UL電線の選定方法

UL電線を選ぶ際は、使用する機器の要件や環境条件を確認する必要があります。
最初に考慮するのは、定格電圧と温度範囲です。機器の動作電圧に合う電線を選び、想定される使用温度をカバーできることが大前提になります。
次に導体の太さや材質を確認します。電流容量や配線の長さを踏まえ、AWGサイズや被覆材を選択することで効率と安全性を確保します。
使用される場所の環境要因(湿度、油、薬品など)や可動の有無もポイントです。耐油性や耐摩耗性が必要な工場ラインでは、特定用途電線が適切な場合があります。
複数の安全規格認証が要求される場合は、ULとCSAなど複数の認証を同時に取得している特定規格電線を選択することで、追加試験や設計変更のコストと時間を削減できます。
価格も重要ですが、安全性や信頼性が損なわれると、後々のトラブルにつながる可能性が高いです。総合的に判断し、長期的なコスト削減が期待できる電線を選ぶようにしましょう。
UL電線に関する規格・認証制度
UL電線は、米国のULによる認証だけでなく、国際的な複数の安全規格機関による認証も取得できる場合があります。特に重要なのは、カナダのCSA、欧州市場向けのVDE、国際電気標準会議(IEC)による国際規格です。これらの複数認証を取得した電線は、グローバル市場での展開がスムーズになり、各国への輸出時に必要な適合性証明手続きが大幅に簡略化されるメリットがあります。
UL認証には「Listing」と「Recognition」という区分があります。Listingは完成品としての製品全体の安全性を確認する認証であるのに対し、Recognitionは最終製品に組み込まれる部品としての適合性を確認する認証です。
ULの認証を得るためには、試験所でのテストに加え、製造工場の定期的な監査があります。認証取得後も品質の維持管理が欠かせず、基準を満たさなくなると警告や取り消しの可能性があります。
北米市場では特に、ULマークは製品の安全性と信頼性を示す重要な指標です。UL認証を持たない電気製品の取り扱いや設置を拒否することもあるため、北米市場への参入を目指す製造業者にとって、UL認証の取得は事実上の必須条件となっています。
まとめ
UL電線は、北米で広く使用されている安全性の高い電線です。UL規格への適合は、北米市場において製品の安全性と信頼性を保証する上で重要な役割を果たします。
UL電線にはさまざまな種類があり、用途や環境に応じて適切な種類を選定する必要があります。UL電線に関する規格や認証制度、入手方法、そして日本の電線との違いを理解することで、適切なUL電線を選定し、安全な電気配線を行うことができます。
UL電線の利用は、北米市場へのアクセスだけでなく、グローバルな視点での製品安全確保にもつながるといえるでしょう。
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